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水谷隼、全日本決勝を語る④【第4ゲーム】

 史上稀に見る激戦になった男子シングルス決勝宇田幸矢(JOCエリートアカデミー/大原学園)対張本智和(木下グループ)の攻防を、水谷隼(木下グループ)が圧倒的な分析力と説得力で読み解くスペシャル企画。
 宇田が2ゲームを連取するも、第3ゲームは張本が持ち味を出して返した。宇田が取れば王手、張本が取れば試合を振り出しに戻す重要な第4ゲームを、水谷が解説する。

サービスの組み立てが定まり始めた宇田が王手をかける

張本がチキータとストップで
スタートダッシュをかける

宇田 0-1 張本 張本がミドル前に来たサービスをチキータして得点
宇田 0-2 張本 張本がフォア前へのストップから4球目攻撃で得点
 張本は試合を通して、宇田のバック側へのチキータとフォア前へのストップが効いています。この二つのレシーブを的確に使えれば間違いなく勝てると思います。

宇田 0-3 張本 張本がラリーからバックハンドカウンターで得点
 張本はいいプレーで3本連取しました。1ゲーム目と同じく、3-0といいスタートダッシュです。

張本のリードに待ったをかける宇田のサービス変更

宇田 2-3 張本 宇田がバック前のサービスから4球目攻撃で得点
 宇田が張本のバック前にサービスを出したのは、この試合でおそらく2回目です。張本がコツをつかんできて今から「乗ろう!」という時に、宇田がうまくサービスを変えました。

宇田 2-4 張本 宇田がロングサービスからの3球目攻撃をミス。張本が得点
 宇田が、意表を突くロングサービスで主導権を握りましたが、3球目をミスしてしまいました。しかし、読み合いという面では、宇田が張本に勝っていますね。

宇田 2-5 張本 張本が3球目をフリックで攻撃して得点
 張本と言えば、フォアハンドのフリック(払い)がすごくうまい印象ですが、この試合で初めていいフリックが決まりました。このようなフリックを積極的に使っていけば、宇田にはプレッシャーになります。

宇田 3-6 張本 張本がフォア前に来たサービスをチキータで得点
 このラリーの張本はさすがでした。宇田がサービスのコースをフォア前に変えてきたところを、チキータでうまく処理しました。このように、張本がどんどんチキータをしていけば、宇田は出すサービスが少なくなっていきます。

宇田 4-7 張本 張本がツッツキに対するバックハンドドライブをミス。宇田が得点
宇田 5-7 張本 張本がツッツキをバックハンドドライブ。それを宇田がカウンターからのラリーで得点
 この2本のラリーは、宇田が困ってバック側にツッツキしてきて(張本の)チャンスだったのですが、張本はどちらも攻め切れていないですね。
 本来の張本であれば、バック側に来たツッツキに対しては回り込んでフォアハンドで攻めるパターンも決定力が高いのですが、この試合では1本も回り込んでいません。張本の(余裕のない)精神面を物語っているラリーです。

宇田 6-7 張本 張本がロングサービスをフォアハンドドライブでレシーブしようとしてミスし、宇田の得点。張本がタイムアウト
 僕だったとしても、ここでタイムアウトですね。
 張本ベンチは、レシーブはチャンスがあればどんなサービスが来ても「バック側へチキータ」、それが無理だったら「フォア前へストップ」ということをアドバイスしたのではないでしょうか。
 一方、サービスに関しては、言えることがあまりなかったと思います。なんとなく全部のサービスがうっすら効いている感じなので、明確に「このサービスが効いている」というのが張本側は見えていません。

宇田 7-7 張本 宇田が回り込み3球目攻撃で得点
 張本は、タイムアウト空けで絶対取りたかった1本をチキータで攻めたかったと思いますが、宇田のサービスが予想以上に長かったので、打球点を落としてドライブでレシーブしたところを狙い打たれてしまいました。

宇田 8-7 張本 宇田がツッツキレシーブからのラリーで得点
 張本は7-3リードから逆転されたので苦しいですね。
 一方、宇田はツッツキした時は3本連続で得点しています。宇田は、「レシーブはツッツキが一番効いている」というのが明確に分かっていると思います。
 張本としては、宇田のツッツキをフォアハンドで攻めたいところですが、サービスがあまり効いていないので困っていると思います。横回転系のサービスを出すと強烈なチキータが来るし、ロングサービスも狙い打たれている。張本はサービスを出しにくい状況が続いています。
 ただし、フォア前からは強烈なレシーブを受けていないので、張本としては宇田のフォア前へのサービスがポイントになると思います。

宇田 10-8 張本 宇田が回り込み3球目攻撃からのラリーで得点
 宇田の積極性がいいですね。
 張本は1ゲーム目の終盤、フォア側に少し長めに出てくる宇田のサービスを、ストレート(左利きの宇田のフォア側)へ狙ってミスしてから、クロス(左利きの宇田のバック側)にしかレシーブできなくなっています。
 その一方、宇田は、このラリーのように張本の「フォア側に少し長めに出るサービス」と「バック側へのロングサービス」の2つにサービスを絞り始めています。
 理由は、張本のチキータがよすぎたからです。
 宇田は、張本のフォア前に4種類くらいのサービスを出しましたが、全てチキータで狙われました。そのため、「フォア前へのサービスは通用しない。何を出してもチキータされるから、いっそ台から出して絶対にチキータさせないようにしよう」と、この4ゲーム目で開き直ったのだと思います。
 宇田が「張本のチキータを狙い打とう」と考えられるくらい、張本のチキータにある程度対応できていたら、宇田のサービスの組み立ては変わっていたと思いますが、張本は自身のチキータの精度の高さがあだになった形です。

宇田が、ナチュラルフェイクモーションのツッツキで王手!

宇田 12-10 張本 張本がツッツキに対するバックハンドドライブをミスし、宇田が得点
 やはり、張本はツッツキに対するバックハンドドライブが入りません。理由としては、宇田が打球点を少し落としてレシーブしているからです。
 宇田は、初めにチキータできるかを見て、そのあとフォアハンドで打てるかを見て、どちらも駄目だと判断してからツッツキするので、張本としては2回待たなければならず、足が止まってしまいます。

●男子シングルス決勝
第1ゲーム 宇田幸矢 13-11 張本智和
第2ゲーム 宇田幸矢 11-9 張本智和
第3ゲーム 宇田幸矢 8-11 張本智和
第4ゲーム 宇田幸矢 12-10 張本智和

宇田が、戦術的にも精神的にも優位に

 4ゲームを試合して、お互いの作戦がだんだん見えてきた中で、宇田が優勢ですね。宇田は、フォア側にハーフロングサービスか、バック側へのロングサービスからの展開が得点源になっています。
 一方の張本は、まだ明確な作戦が見えていないような感じです。ただし、縦回転系のサービスを宇田のフォア前に出すと、それほどいいレシーブはされていないので、そのサービスを中心にしようと考えていると思います。
 気持ちの面でも勢いに乗っているのは宇田ですね。攻めている回数が圧倒的に違う。張本はうまく凡ミスせずに、なんとか点数を取っているという印象です。

(まとめ=猪瀬健治 動画=小松賢)

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