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水谷隼、全日本決勝を語る②【第2ゲーム】読みが冴えた森薗が2ゲーム連取

 名勝負になった2021年全日本卓球男子シングルス決勝及川瑞基(木下グループ)対森薗政崇(BOBSON)の攻防を、水谷隼(木下グループ)が解説するスペシャル企画。
 第1ゲームは、調子の上がらない及川に対し、積極的かつ安定したプレーを見せた森薗が先制した。第2ゲームは両者の間でどのような攻防が繰り広げられたのか。水谷が鋭く、深く読み解く。

及川の繰り出す手を冷静に読み、
的を絞った森薗が2ゲームを連取

及川 1-0 森薗(及川がレシーブからのラリーで得点)
 フォア前に来た少し長めのサービスに対して、及川がストレート(森薗のフォア側)へレシーブしました。一見するとうまいようですが、よくないですね。リスクが大きすぎます。フリックやチキータなど、ほかにもっといいレシーブの選択肢がある中、1番難しいレシーブをしたと思います。
 加えて、レシーブ自体で得点できていないので、リスクに見合わないですね。

及川 1-1 森薗(森薗がラリー戦を制して得点)
 及川が攻めているのに、その倍くらいの速さで森薗に打ち返されています。しかも、打ち返されるのは決まって(森薗の)フォア側なんですよね。森薗のバックハンドは強打がほとんどないのに、あえてフォア側へ送ってしまうのは、及川の悪いところです。
 及川は僕と練習していても、こちらの体勢が崩れて厳しいときにフォア側に打ってきてくれるので、巻き返せることが多い。このようなコース取りについては、及川はもっと考えるべきです。

及川 1-2 森薗(森薗がロングサービスをレシーブして得点)
 及川はいいロングサービスを出しましたが、森薗がさらにいい反応をしました。相手にこのようなレシーブをされると、及川としてはロングサービスを出しにくくなります。

及川 1-3 森薗(森薗がロングサービスをレシーブしてからラリーで得点)
 2本続けてロングサービスを出した及川の戦術はものすごくいいです。相手は常にロングサービスへの警戒が必要になりますから。点数は取れませんでしたが、この戦術は後々効いてくると思います。
 一方の森薗も、とてもよかったですね。2本連続で出されたロングサービスに対しては、かなり集中していないとあそこまでのレシーブはできません。これで森薗は、次のレシーブでロングサービスを待たなくてもよくなりました。
 今のところ、完全に森薗が優位です。

及川 2-3 森薗(及川がロングサービスをレシーブしてからラリーで得点)
 森薗がロングサービスを出してきましたが、及川が仕返しとばかりにうまくレシーブしました。
 ここまで、お互いがロングサービスをうまく出していますね。点数になるかどうかではなく、相手に「長いサービスが来るかもしれない」と警戒させる目的で、序盤はこういうサービスの組み立てでいいと思います。

及川 2-5 森薗(森薗がチキータレシーブで得点)
 前のレシーブでロングサービスを2本返したことにより、「ロングサービスはない」と読んだ森薗が、狙い通りにチキータしました。ここで及川が(3本続けて)ロングサービスを出していたら素晴らしかったのですが。
 読み合いでは、完全に及川が劣勢です。

及川 3-5 森薗(森薗のチキータレシーブに対応し、及川がラリーで得点)
 このラリーも同じです。及川が得点しましたが、森薗はバック側にロングサービスがないと読み切っているので、得意のチキータでレシーブできる展開になっています。

及川 3-6 森薗(及川がチキータレシーブをミスし、森薗が得点
 この試合を通して、及川はチキータのミスが多かったですね。入っていれば有利になるだろうという場面でことごとく入らないので、森薗はチキータを待たなくてもよくなりました。これが終盤まで響くことになります。
 この場面では、及川は無理してチキータしないで4球目を狙った方がよかったと思います。フォア前に少し長めに出してくる森薗のサービスに手こずっていることが無理してしまう理由ですが、入らなければ苦しいです。

及川 4-6 森薗(及川がストップレシーブから得点)
 及川がうまくストップしました。及川としては、このように無理せず、森薗のフォア前にレシーブする戦術がいいと思います。

森薗の読みが冴えるレシーブ強打

及川 4-7 森薗(森薗がミドルに来たロングサービスを強打して得点)
 森薗は前のレシーブで2回続けてチキータしたので、「次はチキータさせないようなサービスを出してくるだろう」と警戒していました。森薗が完全に優位に立ち回っています。
 森薗の予想通りにサービスを出している及川は、完全にはまっています。どこかで断ち切らないと、このままずっと相手の罠(わな)にはまったままサービスを出すことになります。
 こういうときの打開策になるのが、出したことのない新しいサービスです。

及川 4-8 森薗(森薗がストップレシーブから得点)
 森薗が得点しましたが、一瞬バック側へのロングサービスを警戒しましたね。及川のサービスのモーションをよく見ると、体を森薗のバック側へ向けながら、手首だけを使って逆モーション気味にフォア前へ横下回転サービスを出しています。これによって、森薗はチキータでレシーブできませんでした。
 得点できませんでしたが、このようにコースを分からせないサービスは、森薗のようにチキータを得意とする選手には有効です。

及川 5-8 森薗(森薗が3球目攻撃をミスして及川の得点)
 及川としては、森薗が3球目攻撃をミスしてくれてラッキーでした。
 このラリーのように、フォア前に少し長めに出してくる左利きの選手のサービスに対し、右利きの選手が左利きの選手のバック側へループドライブ(回転量の多いドライブ)でつなぐレシーブは、1番よくない。このレシーブは、左利きの選手が最も得意なパターンです。ストレートでもクロスでもミドルでも、どこでも好きなコースに打てるので、右利きの選手は守備力がいくら高くてもまず取れません。及川としては、このレシーブは避けたいところです。

及川 6-8 森薗(及川が森薗のバック側を攻めて得点)
 及川のいいプレーですね。前について、無理しないで森薗のバック側を攻めました。
 バックハンドの攻撃力に課題のある森薗としては、バック側に来たボールに対してはチャンスがあれば回り込みたいと思っています。そのため、早い打球点で森薗のバック側を攻めて、回り込む時間をつくらせない及川の戦術はとてもいいと思います。

及川 8-8 森薗(及川が3球目ツッツキで森薗のミスを誘い得点)
 4-7で出したサービスと同じように、このラリーでも及川は体を開いて逆モーション気味にサービスを出して森薗のチキータを防いでいます。
 サービスの出し方を変えたことにより、及川に少し活路が見えてきました。

及川 8-9 森薗(及川がバックハンドフリックレシーブをミスし、森薗が得点)
 こうしたミスが痛いですね。及川は勝負するとき、ことごとく入りません。森薗に3球目で攻められているので無理してしまうのは分かります。
 分かりますが、及川はこの試合で初めてバックハンドフリックを使いました。初めて使う技術というのは、精度より何より「ミスしない」ことが大切なんです。相手は絶対に待っていないからです。そのため、相手コートに入れさえすれば点数になる可能性が高い。それなのに、こういうふうに簡単にミスしてしまうのは、とてももったいない。
 8-8という重要な場面は、初めての技術を使うタイミングとしてはパーフェクトでしたが、まだ卓球を分かっていませんね。(及川はチームメートで後輩なので)厳しくいきます(笑)

相手のミスを踏まえ、見事に的を絞った森薗の3球目チキータ

及川 8-10 森薗(森薗が3球目チキータで得点)
 仮に8-8で及川のバックハンドフリックが入っていたとしたら、森薗は絶対にそれを警戒します。しかし、及川がミスしたことにより、森薗は「バック側に長いレシーブは来ない」と読んでチキータしました。森薗はここまで、フォア前のストップに対してはストップで返していましたから。
 それを待って、チキータで攻めた森薗が一枚上手です。

及川 9-10 森薗(及川が台上争いからフリックで得点)
 ここで、及川はサービスを縦回転系に変えてきました。さっきまで、逆モーション気味に出す横回転系サービスが効いていたのに、それを変えるという謎なプレーです(笑)。僕だったらサービスは変えません。

及川 10-10 森薗(及川がロングサービスから得点)
 この及川のロングサービスはよかったですね。ずっと森薗のフォア前あたりにサービスを集めていて、1番勇気のいるタイミングでロングサービスを出しました。
 出すタイミングもロングサービスの質も完璧です。

及川 10-12 森薗(及川が3球目フリックをミスし、森薗が得点)
 最後も、及川は謎の縦回転系サービスを出しました(笑)。その前に出した時(8-10)もサービスは効いていなかったのに、なぜか効いていた横下回転系サービスを出さずに、8-10で使った縦回転系サービスに戻すという、謎な及川でしたね。
 森薗にいいチキータをされたくないという、及川が縦回転系サービスを出す狙いは分かるといえば分かるのですが、このゲームは逆モーション気味の横下回転系サービスが効いていました。それを使うべきだったと思います。

●男子シングルス決勝

第2ゲーム 及川瑞基 10-12 森薗政崇

冷静な読みが冴える森薗。しかし、サービスの組み立てに不安材料

 森薗は今のところ完璧だと思います。相手をしっかり把握して、「絶対にこれはないだろう」というプレーを自分の読みから外し、待ちを限りなく狭めて、そこをしっかり狙い打てています。加えて、及川が逆を突いてきたプレーにも対応し、無意識に出るプレーもかなりいい状態です。
 つまり、冷静なんですよね。決勝戦という舞台で、もっと緊張してもおかしくないのですが、冷静に相手を分析し、本当にいい形で2ゲームを連取しました。
 一つ、森薗のよくなかったところというか不安材料は、「サービスをほとんどフォア前にしか出さなかった」ことです。同じサービスだけで7ゲームを続けることは絶対にできません。次のゲームで及川は、苦しんだフォア前のサービスに集中して対策してくるはずです。
 本来であれば、もう少しサービスを散らしておくと、フォア前のサービスを対策されたら次は別のサービスで、と切り替えられるのですが、今のサービスの組み立てではそれができません。対策されたら、「次どうしようか」と迷うところから始まってしまう。そうなると、そこからの2〜3点は様子を見る感じで優位に進めることができません。そのため、森薗は、このゲームでもっといろいろなサービスを出して、「これは効きそうだな」というサービスを見極めておく必要があったと思います。
 一方の及川は、謎なプレーをなくすことですね(笑)。サービスでは、なぜそこで効いているサービスを使わないのかという謎です。
 レシーブも、チキータやバックハンドフリックなど、変えたときに限ってミスしています。ストップからで十分にいい展開なのに、なぜストップを通さないのか疑問です。
 及川はあれこれ変えるのではなく、できること、十分通用していることをやるべきです。


(まとめ=卓球レポート)

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