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水谷隼、全日本決勝を語る④【第4ゲーム】森薗が積極的に仕掛けて王手

 名勝負になった2021年全日本卓球男子シングルス決勝及川瑞基(木下グループ)対森薗政崇(BOBSON)の攻防を、水谷隼(木下グループ)が解説するスペシャル企画。
 タイムアウトを機に窮地を脱し、第3ゲームを奪い返した及川。この勢いで及川が試合を振り出しに戻すのか。それとも、森薗が王手をかけるのか。中盤戦の第4ゲームに入り、いよいよヒートアップしていく両者の攻防を、水谷が鋭く深く読み解く。

打つ手が絞られつつある中、及川のミスに乗じ、
森薗が積極的に仕掛けて王手

及川 1-0 森薗(及川がツッツキレシーブからラリーで得点)
 前のゲーム(第3ゲーム)に続いて、及川が森薗のバック側に長いレシーブ(ツッツキ)を徹底しています。そのレシーブに対し、森薗は初めて及川のフォア側に打ちましたが、得点になりませんでした。森薗は及川のこのレシーブに苦しんでいますね。

及川 1-1 森薗(森薗がラリーで得点)
 森薗は、今度は及川のフォア前にあからさまに長くサービスを出して、ツッツキでレシーブさせないようにしてきましたね。これは森薗がうまい。
 及川も高い打球点を捉えていいレシーブをしました。フォア前に長めに来たサービスに対しては、常にこのようにレシーブしたいところです。
 お互いがいいプレーをしましたが、得点した森薗の方が少し苦しめられていると感じますね。及川の長いレシーブを防ぐという意図はいいですが、このサービス自体は相手にチャンスを与えてしまうので、これから先、絶対に長くは使えません。森薗は、まだ苦しい時間が続きそうです。

及川 1-2 森薗(森薗がラリーで得点)
 及川は、アップ系(上回転系)のサービスを森薗のバック前に初めて出しました。初めて出されたサービスに対して森薗はうまく返しましたが、それよりも及川です。
 第3ゲームであれだけサービスが効いていたのに、及川はまたサービスを変えました。「効いているサービスをとっておく」という考えもありますが、それが有効なのは自分が主導権を握っている場合です。今、及川は(ゲームカウント)1対2の(ポイント)1-1と追い詰められている状態です。そこは、効いているサービスを出すべきだったのに、新しいサービスに挑戦するのは「うーん?」という感じですね。
 この先を考えれば、新しいサービスを出すことは悪いことではありませんが、新しいサービスというのは、もろ刃の剣なんです。相手がどんなレシーブをしてくるのか分からないので、点数になるかどうかはフィフティフィフティだからです。この、追い込まれている場面で出すサービスではありません。
 効いているサービスがあるにもかかわらず、変えるのはバッドポイント。謎のバッドポイントです(笑)。全日本が終わった後、及川には「なぜ、効いていることを続けないの?」と指摘しました。

及川 2-2 森薗(及川がフォア前サービスからラリーで得点)
 今度は、及川がバック側にロングサービスと見せかけてのフォア前サービス(効いているサービス)に戻しました。思い切った及川はよかったと思います。
 ただし、このサービスに対し、ついに森薗がチキータをしました。及川のモーションはバック側にロングサービスを出しそうですが、「このモーションのときはバック側に長いのが来ない」と感覚的に分かってきたのだと思います。ここは、試合中に森薗が成長しました。

新しいレシーブに見事に対応した森薗。
一方の及川は大切な手札を失う


及川 2-3 森薗(森薗がフォア側に来た長いレシーブを3球目攻撃して得点)
 及川が初めて森薗のフォア側へフリック気味にレシーブしましたが、なぜ、これまでバック側へ長くレシーブしていてずっと効いていたのに、急に新しいことをするのか。新しいレシーブを使うのはいいのですが、この場面ではありません。「なぜ、このタイミングで使うのか」と思ってしまう。おそらく、先のことを見据えていないからだと思いますが。
 僕だったら、このレシーブは9-9や10-10など絶対に点数がほしい場面で使います。そういう競った場面では、森薗は必ずといっていいほど回り込んでくるので、その時に(フォア側への長いレシーブを)使えばめちゃくちゃ生きるんですよ。それをこの場面で見せてしまったら、相手が警戒してしまうので、もう競った場面で使えません。

及川 2-4 森薗(及川がチキータレシーブをミスし、森薗が得点)
 そして、及川は、なぜかまたチキータしてミス。なぜ、1回も入っていないチキータをこの場面で使うのか。僕がベンチだったら喝(かつ)入れていますね。不思議な人ですよ、本当に。狙いがことごとく裏目に出て、成功しないというのがある意味すごい(笑)
 一方、森薗としては、相手が勝手にやってくれるから、自分からリスクを負わずに合わせておけばいいので助かっていますね。

及川 3-4 森薗(及川が逆横回転系サービスでエース)
 及川はこれでいいんです。逆横回転系サービスを出しておけば、及川にとっていい展開です。

及川 4-4 森薗(及川が森薗のチキータレシーブを3球目攻撃し、得点)
 及川は、少しだけサービスを変えましたね。このサービスは、邱さん(邱建新木下マイスター東京総監督)が選手時代に得意としていたサービスに近いのですが、相手の手元でちょっと伸びるんです。それによって、森薗は詰まってチキータが甘くなりました。
 出したタイミングはともかく、精度がよかったですね。あれだけ上回転をかけると台から出てしまうリスクがありますが、台の中に小さく収めました。

及川 4-5 森薗(森薗がラリーで得点)
 及川のストップでのレシーブは非常にいいです。4球目のフォア側への流しもよかった。(森薗のボールが)ネットで点数にならなかったのが痛かったですね。

及川 5-5 森薗(及川がフリックレシーブで得点)
 このゲーム、及川は1本も森薗のバック側へフリックしていませんでしたが、ようやくです(苦笑)。
(バック側への長いレシーブを)あえて控えているというのはないと思います。森薗に3球目で決められてしまう雰囲気を感じていたのだと思いますが、及川はストップから十分に展開できているので、チキータや流しなどいろいろなレシーブは控えるべきです。

及川 5-6 森薗(森薗が4球目チキータで得点)
 及川のサービスがネットにかかりましたが、危ないですね。全然効いていない縦回転系サービスを出そうとしました。サービスをやり直して、少し変えましたが、やはり縦回転系に近いサービスで、森薗にストップからチキータされました。
 これまで、及川が逆横回転系サービスを出したときは、8割から9割の割合で得点しています。なので、その逆横回転系サービスをメインで出すべきだと思って試合を見ていました。
 及川本人も(逆横回転系サービスが)効いている実感はあったと思いますが、「ほかのサービスでも俺は点数が取れる」というのを見せたかったんですかね(笑)。

及川 6-6 森薗(及川がロングサービスで得点)
 及川は、逆横回転系サービスをようやく出したと思ったらネットにかかりました。そこからのロングサービスはよかったですね。
 ネットで間を置いてからのロングサービスはずるい(笑)。嫌らしいです、戦術が(笑)。でも、この発想はすごくいいと思います。なにかしら間が空いたときは相手の警戒が薄れますから。このあたりは、ブンデスリーガで長くプレーした及川の経験でしょう。

及川 7-6 森薗(及川がストップレシーブからラリーで得点)
 森薗がサービスのコースをストレート(及川のバック前)に変えてきましたが、及川がしっかりストップしました。及川は、フォア前のサービス以外、ほとんどパーフェクトにレシーブできています。
 森薗としては、フォア前にサービスを出し続けるしかないという状況ですね。

及川 8-6 森薗(及川がロビングで森薗のミスを誘い得点)
 及川のツッツキを森薗が3球目バックハンドドライブして主導権を握りましたが、及川がロビングで得点しました。
 Tリーグでもよく見せますが、及川はこのようなしのぎがとても強い。この展開が及川の1番の特徴かもしれません。(ロビングしたら)だいたい点数を取ります。
 僕もロビングを使いますが、僕の場合はカウンター(逆襲)を狙っていてロビングをあまり高く上げないので、相手が打ちミスするということはあまりないのですが、及川のロビングはボールの軌道がすごく高いんです。そのため、相手はタイミングが取りにくくてミスが出てしまいます。
 この試合、及川は強みのロビングをあまり使いませんでしたが、左利きの森薗のコース取りが両サイドに厳しいので、ロビングに行き着く余裕がなかったのですね。

及川 8-7 森薗(及川が5球目をミスし、森薗が得点)
 及川は、効いている逆モーション気味のフォア前へのサービスを出しましたが、森薗がいいレシーブ(ストップ)をしました。初めから「ストップする」と決めていた感じです。この場面で、1番いいレシーブをしましたね。
 及川は待てませんでした。

及川 8-8 森薗(及川が5球目をミスし、森薗が得点)
 及川のフォア前への逆横回転系サービスはとてもよかったし、3球目も悪くありませんでしたが、5球目でフォアハンドドライブをミスしました。
 前のラリーと合わせて、ここにきて2本連続でのフォアハンドの凡ミスは痛いです。

及川 8-9 森薗(森薗がサービスエースで得点)
 及川は、先ほどのラリー(及川8-6森薗のラリー)でフォア前に来たサービスをバック側に長くツッツキして森薗に打たれていたので、ストップで短く止めようと思いすぎました。その結果のネットミスです。

相手の心理を読み切った森薗の鮮やかな3球目カウンター攻撃


及川 8-10 森薗(森薗がフリックレシーブを3球目カウンターし、得点)
 1本前のプレーで及川はストップをミスしているので、「フォア前に上回転系のサービスを出せば、こちらのバック側に長くレシーブしてくるはずだ」と森薗は完全に読んでいました。この場面で及川がストレート(森薗のフォア側)にレシーブできれば、さすが及川、おめでとうという感じでしたが、それ以外のレシーブはすべて狙い打とうと森薗は待っていましたね。サービスを出してからの回り込みが、これまでで1番早かった。
 一方の及川は、1本前のストップをミスしたことにより、読み合いで森薗に上を行かれてしまいました。

及川 8-11 森薗(森薗がロングサービスをレシーブしてからのラリーで得点)
 いいタイミングで及川がロングサービスを出しましたが、森薗がうまく読んでレシーブから攻撃しました。及川は、この前の2本のサービスのときに森薗にストップ(8-7)とチキータ(8-8)でいいレシーブをされているので、サービスの選択肢が限られてしまいましたね。
 森薗からすると、2本(ショートサービスに対して)いいレシーブをしていたので、ロングサービスを警戒していたと思います。

●男子シングルス決勝

第4ゲーム 及川瑞基 8-11 森薗政崇

積極的に仕掛けた森薗が王手。「どちらが積極的にプレーできるか」が勝敗の鍵

 及川としては、いい形で8-6とリードしてから逆転され、(ゲームカウント)1対3になってしまったので苦しいですね。ただし、及川のプレーはそれほど悪くありません。苦しんでいたフォア前に出るか出ないかのサービスに対して、ようやくレシーブミスがなくなってきました。
 その半面、サービスが少し効きにくくなって3球目が思うように攻められなくなりました。これは森薗も同じで、お互いにサービスからの展開が限定されてきた印象ですね。
 及川がここから挽回するとしたら、まず逆横回転系サービスをメインに出すこと。それから、もう少し積極的に攻めることがポイントになると思います。ここまで、及川が強いボールを打ったのは1ゲームに1本あるかどうかで、あとは6割から7割の力で入れているボールが多く、それを森薗に狙われています。そのため、チャンスがあれば積極的に振り切ることです。「このまま守備的なプレーを続けていたら及川は絶対に勝てない」と思って試合を見ていました。
 一方の森薗は、及川が今のところ守備的なので、攻撃の意識を忘れないことです。及川がリズムをつかんで積極的に攻撃してきたら、森薗は厳しくなります。このゲームの最後のプレー(回り込み3球目カウンター)や、8-6で見せたストップレシーブのように、「これで行く」と決めたら、多少のリスクを負ってでも自分から仕掛けていくべきです。
 この試合で森薗がいいときは、思い切って攻めています。そのため、森薗としてはガンガン攻めていきたい。守ったら負けると思います。


(まとめ=卓球レポート)

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