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全日本卓球男子シングルス2連覇 
松島輝空インタビュー(前編)

 劇的な初優勝から1年。今年は優勝候補筆頭として臨んだ全日本卓球選手権大会で、立ち止まることなく、日々積み重ねてきた努力の成果を存分に見せつけて男子シングルス2連覇を果たした松島輝空(木下グループ)。
 その松島に、卓球レポートとしては初のインタビューを行い、その強さの核心に迫った。
 前編では、昨年の再戦が続いた男子シングルス準々決勝以降を中心に、激闘の裏側を振り返ってもらった。



全日本という舞台の面白さを感じた

--松島選手にとって全日本卓球選手権大会はどのような位置づけの大会ですか?

松島輝空(以下、松島) 日本で一番大事な大会だと認識していて、日本選手が全員いる中で一番を狙う大会なので、オリンピック、世界卓球だけは別ですけど、それらの大会の次ぐらいに置いています。
 もちろんWTTも世界ランキングが今は本当に大事ですけれど、日本でスポンサーも含めていろいろな方々にアピールできるのは全日本だけしかないので、それも含めていろいろな意味で大事な大会だと思います。

--全日本には小学生時代から出場していますが、そうした意識はいつ頃から持ち始めましたか?

松島 もちろん以前から特別な舞台だと思っていましたが、去年、男子シングルスで初優勝できて、この舞台の面白さなど、いろいろ感じた部分がありました。
 去年優勝して、さらにいろいろな方々に見てもらって、そして、スポンサーになってくださる方もいたので、優勝してから、以前にも増してそう思うようになった部分はあります。

2020年、松島は全日本(一般の部)に12歳で初出場。この年はジュニア男子では決勝進出を果たした

--松島選手が感じる全日本ならではの、他の大会にはない面白さとはどのようなところですか?

松島 やっぱりみんなが緊張していて、普段味わわない空気感だったり、そういうところに自分は面白さを感じます。
 自分は緊張することは少なく、全日本でもあまり緊張はしませんが、普段よりは少しは緊張感があります。

--例えば、国際大会で中国選手と対戦する時よりも緊張感がありますか?

松島 そうですね。

--今大会は前回優勝者ということで追われる立場だったと思います。組み合わせを見た感想と、その後どのような準備をしてきたかを教えてください。

松島 今まで自分が向かっていく立場は経験してきましたが、今回は追われる立場でした。当たる相手は想定していたので、その中にまた(去年も対戦した)真晴選手(吉村真晴/SCOグループ)や町選手(町飛鳥/ファースト)がいましたが、どの相手が来ても自分がやる準備は変わらなかったので、その準備が結果につながったかなと思います。

--特定の選手の対策練習もしましたか?

松島 この選手に対して、こういう対策をしようというのはあまり考えていなくて、どの選手が来ても自分がやることは変わりませんでした。
 あとは、一番警戒していたのは張本選手(張本智和/トヨタ自動車)です。張本選手との一戦を一番自分の中で大事にしていました。

--張本選手との対戦を意識した時に練習にはどのように臨みましたか?

松島
 やはり一番強い選手で、わずかな1点が勝敗を分けると思うので、あと1点をどう取るかを意識しながら練習に取り組んできました。

昨年の全日本でも準決勝で対戦した張本を警戒していたと松島

メンタルは強くなっている

--今年の全日本は昨年の再戦になった選手が大勢いました。その中で、準々決勝の吉村真晴選手との一戦は内容的にかなり接戦になりました。この準々決勝をどのように振り返りますか?

松島 去年と同じような組み合わせでしたが、真晴選手は本当に去年とは別のやり方でプレーしていると感じました。強打も多かったし、自分がやることを相手が分かっていたようなプレーが多くて、結構苦しい場面は多かったんですけど、最後のあと1点を自分がつかめたので勝てたかな、というふうに思います。

--吉村選手は完全に「対松島輝空」戦術で普段とは違うプレーをしていたと思います。対戦してみての印象はいかがでしたか?

松島 やっぱり下がってくれた方がもちろん自分的には楽ですが、今の時代、強くなっていくと下がったら苦しくなってくるので、真晴選手もたぶんそう考えながらプレーしていていると感じました。レシーブのチキータだったり、そういう面で本当に押されている感じもしたので、いろいろ調整しているんだな、と感じました。

吉村は対松島戦術を徹底したプレーで松島に迫った

--万全の松島対策をしてきた吉村選手を上回れた要因はどこにあったと思いますか?

松島 10-10であと1本取れるか取れないか、そこの1本を取れたのが自分の中で勝てた要因だと思います。

--4ゲームもジュースが続く接戦でしたが、3つのジュースを制して4対1で勝利しました。ジュースで最後の1本を取り切れた要因はなんだったのでしょうか?

松島 やっぱりメンタルを強化してきたので、メンタルは強くなっているなと思ったのと、1点だったらラッキーだったり不運だったり、いろいろありますが、今回はラッキーというよりもあと1点を自分が粘り強く取りにいけたというところが大きかったと思います。

--松島選手が取り組んできたメンタルの強化について詳しく教えていただけますか?

松島 特に先生なんかはいなくて、単純に練習から常に(メンタルの状態を)意識して、あとはゲーム練習をやったときも常に考えながら、落ち着きながらやるという感じです。

--メンタルは強化の必要性を感じていたのですか?

松島 メンタル面が弱点だということは昔から感じていて、そこで何球か取られる部分があったので、メンタルの強化が必要だと常に思っていました。
 特に、弱気になったときに焦ってしまったり、自分がうまくいかなかったら少しイライラしてしまって、簡単に何本か点数を取られてしまうような場面ですね。もちろん今でもあることはあるんですけど、数が少なくなってきましたし、全日本で焦らずにプレーができたことはひとつの自信にもなりました。

--今大会ではリードされたゲームを逆転で取る印象的な場面も多かったですね。

松島 そうですね。今までは逆転勝ちが基本的に少なかったんですけど、そこも含めてメンタルも成長しているなと思いましたし、いろいろな方が応援してくださっていたので、負けていても一球ずつ戦術を変えながら、粘り強く行こうと意識してプレーすることができました。

張本戦は「あと1本」を取ることができた

--次に、準決勝の張本戦を振り返っていただきたいと思います。張本選手もやはり松島対策をしてきている印象を受けました。第1ゲームは張本選手がダッシュをかけてきましたが、落ち着いてプレーできましたか。

松島 去年、自分が勝っているので、対策されることはもちろん、相手も思い切って振ってくると分かっていましたし、1ゲーム目は1球目からエンジンをかけている印象を受けました。あの第1ゲームは取れると思っていませんでしたが、戦術を変えて取ることができて、あの1ゲームを取れたのは大きいと思っていました。

--第1ゲームはリードを広げられて、松島選手がサービスを変えたのが印象的でした。

松島 そうですね。割り切って1回戦術を変えたら、たまたま何球か取れた、本当にたまたまという感じです。

--今大会では大胆な戦術転換など試合運びのうまさも光ったと思います。そうした点で普段意識していることはありますか?

松島 自分の中でサービスの組み立てや戦術の転換は自信がある方で、そういう面は得意なので、今回特別目立ったと思いますが、練習もしませんし、そういうところは特に意識していません。

--水谷隼さん(木下グループ)が「令和のベストゲーム」と評した激戦になりましたが、勝ち切れた要因はどこにあったと思いますか?

松島 もちろん最後、張本選手のときも「あと1本」を自分が取り切れたというのもありましたが、どちらが勝ってもおかしくないゲームでした。2人とも打ち合った中で、いい試合をしていて、自分でもこれだけできるんだと思いましたし、どこがポイントかと言われたら分かりませんが、常に競り合いながら「あと一本を取れた」というだけだと思います。

--試合を通して、基本的には松島選手が攻めて張本選手がしのいで粘っているという印象を受けましたが、ご自身の感触はどうでしたか?

松島 もちろん張本選手はブロックがうまく、その中で攻めもあってという選手なんですけど、自分が攻めているように見えても、ちょっと(甘いボールを)入れたら相手が強いボールを打ってきたりするので、自分の中で余裕もないですし、常に打たれる準備をしながら自分のプレーをしていました。

--4対1で勝利した昨年よりスコア的にも競りましたが、やりにくかったという点はありましたか?

松島 あそこまでのレベルに行くとあまりやりにくい、やりやすいは特にありませんが、あえて言うなら、張本選手がサービスを出す位置を変えてきたなというのは思いましたね。
 あとは、去年だったら結構ブロックが多かったんですけど、狙うボールを狙ってきたり、去年よりももっともっと攻めてきたり、そういうところが変わったなと思いました。

--張本選手に対策されて、なおもそれを上回ることができた理由は何だったと思いますか?

松島 最後に打ち切れた、ブロックする相手を打ち切れたところと、自分があまり下がらずに前でどんどん攻めることができたところが一番大きかったかなと思います。

張本との激戦を制し、松島は感情を爆発させた

やっぱり一番はメンタル

--決勝の話もお聞かせください。昨年と同じ篠塚選手(篠塚大登/愛知工業大)との対戦で、第1ゲームは先行されてから挽回するという流れでした。

松島 去年は篠塚選手にいい形で勝つことができたので、絶対に対策してくると思っていましたが、1ゲーム目は篠塚選手のうまさ、サービスのコースや中陣での粘りでリードされました。サービスを変えて、いい流れをつかむことができました。

--第2ゲームからはつかんだ流れをさらに加速させてすさまじいプレーをしていましたね。2連覇決めた瞬間の心境は?

松島 素直にうれしかったです。

--昨年は「勢いがあった」と優勝後の記者会見で言っていましたが、今年は「優勝できる実力がついた」と大会前から言っていましたね。1年前とどこが一番変わったと思いますか。

松島 やっぱり一番はメンタルですね。あとは経験も積み重ねていて、10-10でもあと1球を取れる自信が結構あったので、地力もついたと思いますし、さらに、いいボールが打てているなと思いました。

--いいボールという意味では、昨年の全日本後に取材した時よりも、体格も一回り大きくなった印象です。フィジカル面での成長も大きいですね。

松島 トレーニングを週2回しているので体も結構筋肉がついてきていますし、両ハンドもしっかりとパワーを使いながら打てているので、以前よりも安定していると思います。
後編に続く

2度目の賜杯。水谷隼と同じく高校2年生からの2連覇は松島のさらなる成長を予感させる

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(取材=卓球レポート、文=佐藤孝弘)

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