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全日本卓球男子シングルス2連覇 
松島輝空インタビュー(後編)

 劇的な初優勝から1年。今年は優勝候補筆頭として臨んだ全日本卓球選手権大会で、立ち止まることなく、日々積み重ねてきた努力の成果を存分に見せつけて男子シングルス2連覇を果たした松島輝空(木下グループ)。
 その松島に、卓球レポートとしては初のインタビューを行い、その強さの核心に迫った。
 後編では、混合ダブルスについて、松島輝空の卓球の真髄、用具についてなど多岐にわたる話を聞いた。(前編はこちら



混合ダブルスで意識しているのは
やりたいようにやることといいボールを打つこと

--混合ダブルスの話も聞かせてください。混合ダブルスは張本美和選手(木下グループ)とどれくらい練習していましたか?

松島輝空(以下、松島) 直前まで練習しませんでした。

--練習をしたのはシングルスが終わってからということですね。

松島 そうですね。

--勝ち進むにつれて、パートナーの張本選手の史上初の4冠の可能性が騒がれ始めていたと思いますが、それがプレッシャーにはなりませんでしたか?

松島 自分は全くなかったです。

--混合ダブルスはどのような意識でプレーしていたのでしょうか?

松島 基本的にミックスダブルスになると男性が決めることが多いので、基本的に自分が自由に自分がやりたいようにやること、しっかりといいボールを打つってことを意識しています。

--混合ダブルス世界チャンピオンの吉村真晴選手(SCOグループ)は以前のインタビューで、混合ダブルスで一番大切なのはパートナーとのコミュニケーションだと言っていました。その点で、松島/張本は極端にコミュニケーションが少ないペアだと映りました。

松島 2人の個々のレベルは高く、大体やることも分かってきているので、あまり話さなくてもやることは分かっているのかなって思います。

混合ダブルスでは両者の高い技術レベルが光った

--シングルスからの流れで松島選手の混合ダブルスのプレーを見ていたら、特に序盤はおとなしく感じました。

松島 (試合を重ねるごとに)だんだんダブルスの感覚が良くなってきたと思います。

--準々決勝の小林広夢/出澤杏佳(ファースト/レゾナック)戦では2対0から追い付かれる苦しい展開でした。どのように乗り越えましたか?

松島 出澤選手が結構特殊なラバーを使っていて、この試合が一番苦しいと思いましたが、なんとかあそこを乗り切ることができたので優勝につながったかなと思います。

--特に異質型やイレギュラーな相手と競り合い場面は難しいと思いますが、どう対処しましたか?

松島 あの試合はやっぱり粘り強く相手のミスを誘う、いけるときはもちろん狙いますけど、いかにミスを誘うかっていうのを意識しながらやっていました。

--準決勝は吉村和弘/長﨑美柚(ケアリッツアンドパートナーズ/木下アビエル神奈川)との試合でした。

松島 和弘選手は普段から練習していたので、ボールも慣れていてやりやすく、自分がいいボールを打てた試合だなと思います。

--決勝は坪井勇磨/赤江夏星(クローバー歯科カスピッズ/日本生命)が勝ち上がってきました。どのように臨みましたか?

松島 自分は両方とも対戦したことがなかったので、どのようなプレーをするか全然分かりませんでしたが、2人とも裏裏でくせがなかったので、やってみたら結構やりやすくて、あまり自分の中では嫌な印象ではありませんでした。台に入れるのは2人とも本当にうまいと感じましたが、自分の中で怖さはありませんでした。

--混合ダブルスで優勝してどんな心境でしたか?

松島 混合ダブルスは初優勝で、タイトルは1個取っておきたかったので、初優勝してうれしかったなと思います。

シングルス王者同士のペアが実力を発揮し初優勝を飾った

自分の卓球を貫いていることで
あの卓球になってるのかなと思います

--ここからは、松島選手の卓球について聞かせてください。今、松島選手が思い描いているもっとこういう卓球をしたいというイメージはありますか?

松島 今のプレーに、さらにもっと両ハンドを安定させて、いいボールを打つのが理想です。今はその理想に近づけている感じです。

--その理想は、いつぐらいから思い描いていたものですか?

松島 昔から両ハンドの良いボールを打つことは求めていました。安定感はまだないので、もっともっと安定して強いボールを打てるようにしたいと思っています。

--「両ハンドで良いボール打つ」だけであのプレーに到達するとは信じられません。松島選手ならではの、ほかの選手とは違う点というのはどこにあると思いますか?

松島 人をまねするのとか人と比べるのは、あまり好きではないですね。(ほかの選手の)プレーは結構見ていますが、自分の卓球を貫いていることで、あの卓球になってるのかなと思います。

--では、特に誰かを参考にしたり、憧れの選手に近づきたいという思いはないのですね?

松島 ないです。

--「自分を貫く」と言ったときに、「自分」の思い描く卓球がありますよね。それはどうやって作られたのですか?

松島 それは日々の練習かなと思います。特に意識していることはあまりないので。

--松島選手の理想の卓球を10としたら今、どれくらいのところまで来ていると思いますか?

松島 6くらいかな。

--10に到達するまでの段階のイメージはありますか?

松島 理想は結構高いので段階を踏んでもいけるかは分からないですし、それがプレーにできるかも分からないですけど、(ロサンゼルス)オリンピックまでに7、8ぐらいまで持っていきたいなと思っています。

--日々の練習の積み重ねで到達できるというイメージがありますか?

松島 練習の質だったり、やり方だったり、いろいろ変えながらやっていくのと、あとは試合でいろいろ試しながらって感じです。

--普段の練習メニューは自分で決めているのですか?

松島 入山コーチ(入山浩治さん)と相談しながらですね。

--入山コーチとは松島選手がこういう選手になりたいという選手像を共有しているのですか?

松島 そこはあまり話したことはありません。入山コーチなりの理想があると思うので、話してはないですけど、お互いにあるかなと思っています。

--全日本では、小学生時代から入山コーチがベンチに入っていますが、ベンチコーチとしてはどのような存在ですか?

松島 今は全日本しか入っていただいていませんが、特にどの試合のベンチでも自分的にはガーガー言われるのがあまり得意ではないので、常にメンタル面だったり、そういうところをアドバイスすることが多い入山コーチは、自分に合っていると感じています。

--ベンチコーチに戦術面でのアドバイスを求めることはありませんか?「ここで1本どうしても取りたいけど、どうしたらいいか分からない」というようなシチュエーションもあると思いますが。

松島 あんまりないですね。自分で考えます。やっぱり人に任せて負けるのが好きじゃないので。自分の意見でやって負けた方が、自分なりにすっきりするので。
「こうしろ」と言われても、その逆をやることもありますし、基本的に自分考えていることを最後は貫くようにはしていますね。

普段の練習からベンチコーチまで、松島は入山コーチに全幅の信頼を置いている

--国際大会でベンチに入っている森薗政崇コーチはいかがですか?

松島 選手を盛り上げるのが本当にうまいコーチで、ベンチのときはもちろんアドバイスはしますけど、サービスなど大事なことは選手に全部任せるという形なので、非常にやりやすいベンチコーチだと思います。

--技術の話ですが、バック側の遠いところを強く打ち返せる松島選手ならではの技術があると思いますが、あの技術は練習して身に付けたものですか?

松島 あれはもうたぶん才能ですね。イメージというよりは、何も意識せずに手が出ちゃう感じなので。

--松島選手が、特に攻めているときにミドルをあまり苦にしていないように見えますが、それはなぜだと思いますか?

松島 ミドルはもちろん、卓球をやっていると狙いやすくて狙われやすいというか、ミドルはどの選手でも弱点ではあると思います。もちろん自分の中でもミドルを狙われたら結構嫌な部分はあるんですけど、ミドルを狙われてもいいボールを打つ練習もしてるので練習の成果が出ているのだと思います。

--もうひとつ松島選手の強みとして、ダイナミックに振った後でも次のボールに入るのが早く、万全の態勢で打っているという特長があると思います。予測能力なのか、動きの速さなのか、その点はどう分析しますか?

松島 動きは結構速い方だと思います。特に横の動きは速いと思います。

松島本人をして「才能」と言わしめたバックハンド。オンリーワンのテクニックだ

以前試したザイア03を
もう1回使ってみたいと思っていた

--用具について聞かせてください。今使っている用具を改めて教えていただけますか?

松島 フォア面のラバーはディグニクス09Cで、バック面がザイア03、ブレードが樊振東 ALCです。
 バック面のラバーをザイア03にを変えたのが中国スマッシュで梁靖崑選手(中国)に勝った2週間前ぐらいですけど、そこからですね。
 ザイア03は以前試したことがあって、その時は合わなかったのですが、気になっていた部分があって、もう1回使ってみたいと思い、実際に変えたら成績が出たという感じですね。

--ザイア03について気になっていた部分とは?

松島 (ボールが)落ちないラバーというのは分かっていたので、それでもう一度「上に行く感覚」をつかんでみたいなと思って試しました。
 初回は思ったよりも上に行くので調整が難しかったですね。その時にザイア03はいいラバーだけど、慣れないと難しいと思いました。

--フォア面にはディグニクス09Cが合っていますか?

松島 そうですね。替える予定はないです。
 自分のフォアハンドはどちらかというと前陣で中国ラバー寄りの打ち方をしていますが、ディグニクス09Cは今までで(打球感が)一番硬いラバーなので、その面でもディグニクス09Cをずっと使っています。硬いとボールが上に出やすいので、前に振っても怖くないし、いいボールが打てるラバーですね。

--ブレードは他の素材も試したことはありますか?

松島 試したことはありますが、アリレート カーボンが一番「自分のボールで打てる」というところで選んでいます。

松島の驚異的なプレーの一端を支えているのがこの用具だ

世界卓球は日本の年にできるように頑張りたい

--勝利後の呪術廻戦のポーズがお馴染みになりましたが、好きな漫画とかアニメはありますか?

松島 実は、呪術廻戦を見たことないんです......。
 あのポーズはたまたまTikTokか何かで見て知っていただけなので。

--休日は何をしていることが多いですか?

松島 午前中は寝ていて、午後は買い物に行ったり、カラオケも行ったりします。

--音楽は聴きますか?

松島 音楽はめっちゃ好きなんです。常に音楽を聴いています。
 どのジャンルでも結構聴きます。ミセス(Mrs. GREEN APPLE)だったり優里さんだったり、そういうのも聴いたりします。昔の音楽も結構好きです。

--昔の音楽は何を聴くんですか?

松島 玉置浩二とかですね。声が渋いのが好きです。

(一同驚き)

--休みの日の買い物やカラオケには選手と一緒に行くのですか?

松島 そうですね。僚一選手(吉山僚一/日本大)や小野寺選手(小野寺翔平/リコー)だったりですね。

--年上の選手が多いですか?

松島 そうです。だいたい年上と接触することが多いので。普段練習するのも年上の相手が多いです。

--今回、妹の美空選手(松島美空/田阪卓研)の活躍を見て、どう感じましたか?

松島 強いので、もっと強くなってほしいし、まだまだ足りない部分もあるんですけど、本当に持っているものは素晴らしいなと思います。

--やはり、卓球選手目線で「もっとこうしたら強くなる」と思うものなのですね?

松島 そうです。簡単に言うとフォアハンドの技術だったり、サービスの種類がまだ足りないので、そこかな。それは本人にも伝えています。

--男子シングルスの優勝で、世界卓球2026ロンドンの日本代表が決まりました。世界卓球の目標を聞かせてください。

松島 世界卓球は、今回は団体ですけど、日本チームとして優勝を目指したいなと思っています。日本が強くなってきているので、日本の年にできるように頑張りたいと思います。

--今年の目標を聞かせてください。

松島 一番はやっぱり世界ランキング5位以内に行くのと、あとはどの大会でも優勝を目指して頑張りたいです。

--卓球選手としての最終目標は?

松島 最終目標はもちろん、オリンピック金メダルです。



 じっくりと話を聞くのは今回が初めてだったが、松島輝空は想像以上に「松島輝空」だった。
 その言葉や態度には、単なる自信を超えた、根源的な「強さ」が満ちている。それは、言葉や態度として表現される前の、生き物としての芯(しん)の強さだ。
  何もかもがビジネスライクに整えられていく現代において、この純粋な芯を保ち続けるのは容易ではない。だが、松島は「笑顔で」とカメラを向けられた際にも、安易に相好を崩すことなく、これが俺の笑顔だと言わんばかりの鋭く強い視線をレンズにぶつけてくる。 それがある種の虚勢でもパフォーマンスでもないことに、私は深い感銘を受けた。「キャラ」という言い訳すら必要としない。彼はただ、松島輝空としてそこに在るのだ。
 彼の卓球は、その生き様を余すところなく投影した作品にほかならない。だから、松島輝空は強い。そして、底知れず面白い。

↓動画はこちら

(取材=卓球レポート、文=佐藤孝弘)

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