卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
今シリーズでは、5月にカタールのドーハで開催された第58回世界卓球選手権大会個人戦(以下、世界卓球2025ドーハ)で繰り広げられた灼熱の熱闘を厳選して紹介する。
今回は、安宰賢(韓国)対F.ルブラン(フランス)の男子シングルス4回戦の名勝負をお届けしよう。
■ 観戦ガイド
安宰賢のフォアハンドとF.ルブランの厳しい攻めが交錯
ゲームオールにもつれた激しいラリー戦の結末は?
ベスト8を懸けた男子シングルス4回戦は、全8試合のうち、実に半分の4試合がゲームオールにもつれる大激戦になった。どの試合もハイレベルでスリリングな展開になったが、今回はその中から安宰賢(韓国)対F.ルブラン(フランス)の一戦をセレクトする。
大会前の予想で、優勝争いに絡む可能性が高いと目されていた選手の一人が、F.ルブランだ。丸みを帯びた中国式ペンを使うペンドライブ型で、シェークハンドのバックハンドと遜色のない裏面打法を操り、台からあまり下がらずに畳み掛けるような両ハンド攻撃を得意とする。加えて、「世界で1番サービスがうまいのはフェリックス(F.ルブラン)だ」と各国のナショナルチーム関係者が異口同音に唱えるほどのサービスの名手でもある。
威力のあるサービスから両ハンドで攻め込むプレーで、地元フランスで行われたパリオリンピック男子シングルスで銅メダルを獲得した勇姿は記憶に新しく、F.ルブランは今大会でも優勝候補の一角と目されていた。
対する安宰賢は、ジュニア時代から強豪韓国の中軸として活躍する選手だ。韓国の伝統である強いフィジカル(身体能力)を生かしたパワープレーが持ち味で、特に、素早いフットワークを土台にしたフォアハンド攻撃を得意とする。世界卓球2019ブダペストでは、張本智和や先輩の張禹珍(韓国)ら強豪を連破してベスト4に勝ち上がっており、大舞台に強い選手だ。
安宰賢のフォアハンドと勝負強さは侮れないが、波に乗っているF.ルブランがやや優勢か。そんな見立てて始まった試合は、F.ルブランが得意のサービスから攻めて第1ゲームをジュースで物にするが、安宰賢が足を使って第2、第3ゲームを連取する展開。続く第4ゲームはディープツッツキをうまく使ってカウンターにつなげたF.ルブランが奪って試合を振り出しに戻すと、第5ゲームのジュースも物にして勝利に王手をかける。
やはり、最近の成績で上回るF.ルブランが勝つのか。そう思われた第6ゲームから、安宰賢が猛然と追い上げを開始し、大舞台での強さを見せつける。
ここぞの場面での安宰賢のフォアハンドと、攻撃チャンスを見逃さないF.ルブランの厳しい攻めが交錯しながら決着まで激しいラリーを繰り広げる名勝負だ。
(文中敬称略)
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(文/動画=卓球レポート)




