卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
今シリーズでは、5月にカタールのドーハで開催された第58回世界卓球選手権大会個人戦(以下、世界卓球2025ドーハ)で繰り広げられた灼熱の熱闘を厳選して紹介する。
今回は、伊藤美誠(日本)対王芸迪(中国)の女子シングルス準々決勝の名勝負をお届けしよう。
■ 観戦ガイド
伊藤が中国の壁・王芸迪とメダルを懸けて激突!
大魔神復活の一戦を、とくとご覧あれ!
世界卓球2025ドーハの女子シングルス準々決勝は、4試合全て中国選手対日本選手になった。現在の女子卓球界の世界情勢を象徴するカードになったといえるが、日中対決の1試合目に行われたのが、今回取り上げる伊藤美誠(日本)対王芸迪(中国)だ。
あらためて述べるまでもなく、伊藤はバック面に表ソフトラバーを貼るシェーク異質型で、変幻自在の速攻を大きな武器とする。中国選手をなぎ倒して優勝した2018年ジャパンオープンを筆頭に数々の実績を残し、最強を誇る中国から「大魔神」と恐れられて一世を風靡(ふうび)した伊藤だったが、金銀銅のメダルを獲得した東京オリンピック以降は精彩を欠き、パリオリンピックへの出場を逃すなど試練の日々が続いていた。
しかし、4月に行われたWTTチャンピオンズ仁川でベスト8まで勝ち上がると、その直後に行われたワールドカップでは3位に入り、復調の兆しを見せて世界卓球2025ドーハを迎えた。
大会に入っても、3回戦でバヨール(ポーランド)の強打に少し苦しんだが、4回戦では実績十分の鄭怡静(中華台北)をストレートで倒し、好調をキープしている。
対する王芸迪(中国)は、安定感抜群の両ハンドを武器に中国の中軸として活躍する選手だ。国際大会で常に安定した成績を収めている王芸迪は「中国の壁」ともいえる選手だが、その一方で、世界卓球2023ダーバン女子シングルス準々決勝で早田ひな、世界卓球2024釜山女子団体決勝では平野美宇に敗れるなど、ここぞという場面で日本勢に黒星を喫している。
中国首脳陣の信頼をこれ以上落とすわけにはいかない王芸迪にとって、伊藤との準々決勝は絶対に負けられない一戦だ。
試合が始まると、出足から気合十分の王芸迪が、ロングサービスで伊藤のバックを崩してから両ハンドで押し込むプレーでペースを握り、第1ゲームを先制する。
立ち上がりから隙のない王芸迪のプレーを見る限り、伊藤が王芸迪を崩すのは容易ではないと思われたが、第2ゲームから、中国が「大魔神」と恐れた伊藤の変化速攻がさえ始める。
「(苦しい時期を過ごした自分にどんな声をかけたいか?という質問に対し)本当に試行錯誤して、いろいろな人と話をしたりいろいろな挑戦をしてきたんですけど、本当に頑張って頑張って我慢して頑張り続ければ、こういう結果もついてくるんだよと教えてあげたいです(試合後の伊藤美誠のコメント)」
伊藤の万感の思いがこもった一戦を、とくとご覧いただきたい。
(文中敬称略)
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(文/動画=卓球レポート)




