卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
今シリーズでは、5月にカタールのドーハで開催された第58回世界卓球選手権大会個人戦(以下、世界卓球2025ドーハ)で繰り広げられた灼熱の熱闘を厳選して紹介する。
モーレゴード(スウェーデン)対戸上隼輔(日本)の男子シングルス準々決勝の名勝負をお届けしよう。
■ 観戦ガイド
日本最後の砦・戸上がメダルを懸けて北欧の異才に挑む
破天荒さと破格の攻撃力が激しく交錯した勝負の行方は!?
上田仁を専属コーチに迎え、サービスやレシーブの配球、相手との読み合いに進境を見せた戸上隼輔は、4回戦でヨルジッチ(スロベニア)とのゲームオールジュースにもつれる激闘を制し、日本男子で唯一ベスト8まで勝ち残った。
戸上が準々決勝でメダルを懸けて対峙(たいじ)するのは、モーレゴード(スウェーデン)だ。
型にとらわれない破天荒(はてんこう)で自由奔放なプレーを持ち味にするモーレゴードは、世界卓球2021ヒューストン男子シングルスで銀メダル、2024年パリオリンピック男子シングルスでも銀メダルを獲得するなど、大舞台で輝かしい実績を残している選手だ。
世界ランキング7位で迎えた今大会でも、トーナメントを順調に勝ち上がると、4回戦では韓国のエース・張禹珍にマッチポイントを握られて追い詰められたが、神業のようなブロックで窮地を脱し、準々決勝まで勝ち上がってきた。
戸上の破格の攻撃力か。それとも、モーレゴードの破天荒なプレーか。
メダルを懸けた準々決勝が始まると、戸上がロングサービスを効果的に使いつつ、ストップを中心とした丁寧な台上から鋭い両ハンド攻撃につなげ、2ゲームを連取する。第1ゲームはジュースまでもつれたものの、第2ゲームを3点で圧倒した戸上のプレーの充実ぶりから、これはメダルまで一気に突っ走るかと思われたが、ここから、数々の大舞台で結果を出してきたモーレゴードが底力を見せ始める。
「試合後に卓レポの梅村さん(梅村礼/タマス・バタフライ・ヨーロッパ)のレポートを見ましたが、『まさにその通り!』という内容でした。痛いところを突かれていましたが、1から100まで全部合っていると思いました。大事なところで攻め急いでしまったんですよね/戸上隼輔インタビュー」
「持ち味の攻撃もよく決まっていたし、レシーブもうまくいっていました。しかし、モーレゴードのすごかったところは、勝負どころで点を取るうまさ。戦術力というより、あれは技術力ですね。技術力をベースにしたコース取り、技の選択でうまくミスを誘われてしまいました。戸上は、『早く点数を取らないと』と焦らされた。戸上のすごいボールが何本も決まっていたので、はたから見るとゲームカウント4対1くらいで勝っているような試合だったと思います。それを負け試合にされたというのは、戸上が悪いというより、モーレゴードが一枚上手でしたね。そして、そうしたところが卓球の難しさであり、醍醐味(だいごみ)でもあります/上田仁インタビュー」
戸上とコーチの上田が脱帽した、巧妙かつ大胆不敵なモーレゴードの強さと、メダルを大いに感じさせる戸上のポテンシャルが光る名勝負から、卓球の醍醐味を味わってほしい。
(文中敬称略。世界ランキングは大会時)
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(文/動画=卓球レポート)




