卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
今シリーズでは、5月にカタールのドーハで開催された第58回世界卓球選手権大会個人戦(以下、世界卓球2025ドーハ)で繰り広げられた灼熱の熱闘を厳選して紹介する。
今回は、カルデラーノ(ブラジル)対梁靖崑(中国)の男子シングルス準決勝の名勝負をお届けしよう。
■ 観戦ガイド
強打のカルデラーノVS鉄壁の梁靖崑
二転三転する終盤の攻防は興奮必至!
世界卓球2025ドーハの男子シングルスで1番の名勝負はどのカードか。この問いかけに対して真っ先に挙がるのが、今回お届けするカルデラーノ(ブラジル)対梁靖崑(中国)だろう。
カルデラーノは、高い身体能力を土台にしたダイナミックな両ハンド攻撃が持ち味の選手で、4回戦まで着実に勝ち上がると、メダルを懸けた準々決勝では安宰賢(韓国)に打ち勝ち、ブラジルに世界卓球史上初となるメダルをもたらして準決勝に勝ち上がってきた。
4月に行われたワールドカップでも並み居る強敵を連破して優勝を果たしており、好調をキープしている。
対する梁靖崑は、準々決勝で優勝候補の一角と目されていた林詩棟(中国)との同士打ちを安定感抜群の両ハンドで制し、世界卓球2019ブダペスト、世界卓球2021ヒューストン、世界卓球2023ダーバンに続いて4大会連続で準決勝に勝ち上がってきた。
両者は世界卓球2021ヒューストンの準々決勝で対戦しており、その時は梁靖崑がカルデラーノにゲームカウント0対3と追い込まれたところから大逆転勝利を収めている。
カルデラーノからすれば是が非でもリベンジを果たしたい試合であり、梁靖崑としても最強中国の番人として譲れない一戦だ。
試合が始まると、カルデラーノが得意の強烈な両ハンドで梁靖崑を押し込み、ゲームカウント3対1と勝利に王手をかける。一方、守備力の高さに定評のある梁靖崑だが、カルデラーノの球威のプレッシャーからか、思うようにブロックが止まらない。
このままカルデラーノが打ち勝つかという展開だったが、しかし、梁靖崑が第5ゲームを必死の攻守で取ると、勝利が目前に見えてやや慎重になったカルデラーノの隙を付いて第6ゲームも奪い、ゲームオールに追い付く。
世界卓球2021ヒューストンの逆転劇を大いに想起させる展開になったが、最終の第7ゲームはカルデラーノがポイント0-3から猛スパートをかけ、なんと10点連取で10-3とあっという間にマッチポイントを握る。
ブラジル勢初の決勝進出。会場の誰もがそう結末を見定める中、カルデラーノがロングサービスからの3球目攻撃を少し雑に攻めてミスをし、10-4となったところから事態は再び切迫していく。続くポイントでは、カルデラーノが梁靖崑の切れたサービスにレシーブミスをして10-5。次のポイントは、カルデラーノが気負いからか台上のボールを空振りして10-6。
10-7。10-8。10-9。
まるでホラー映画のようにひたひたと詰まっていく点差に、場内はえもいわれぬ緊迫感に包まれていく。
カルデラーノは逃げ切れるのか。それとも梁靖崑が追い付いてしまうのか。両雄の意地がぶつかり合う、最後まで目が離せない名勝負に手に汗を握ってほしい。
(文中敬称略)
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(文/動画=卓球レポート)




