卓球レポートは国内外のさまざまな大会へ足を運び、半世紀にわたり、あまたの熱戦を映像に収め続けてきた。その膨大な映像ストックの中から、語り継がれるべき名勝負を厳選して紹介する「卓レポ名勝負セレクション」。
今シリーズでは、5月にカタールのドーハで開催された第58回世界卓球選手権大会個人戦(以下、世界卓球2025ドーハ)で繰り広げられた灼熱の熱闘を厳選して紹介する。
今回は、孫穎莎(中国)対王曼昱(中国)の女子シングルス決勝の名勝負をお届けしよう。
■ 観戦ガイド
最高峰の技が行き交う至高のライバル対決
女子の現代卓球の「今」を目撃せよ!
女子シングルス決勝は、世界ランキング1位の孫穎莎対同2位の王曼昱という順当なカードになった。
前回に続いて連覇を狙う孫穎莎は、4回戦で申裕斌(韓国)との激しい打ち合いをゲームカウント4対2で制すと、準々決勝では大藤沙月、準決勝では伊藤美誠と日本勢を連破して決勝進出。
一方の王曼昱は、準々決勝で張本美和を、準決勝では陳幸同(中国)をともにストレートで寄せ付けず決勝まで勝ち上がってきた。
両者は世界卓球2021ヒューストンの決勝でも対戦しており、その時はハイレベルな打撃戦の末、王曼昱が孫穎莎を僅差で振り切り、世界王者に輝いている。
孫穎莎としてはリベンジ、王曼昱としては2度目の優勝が懸かる舞台だ。
球威や安定性、コース取りの厳しさなど、ほとんどのパラメーターで満点の両者だが、とりわけ孫穎莎の強みは打球点の早さだ。両ハンドで早い打球点を捉え、相手に息つく暇を与えず攻め込むプレーは、孫穎莎の真骨頂だ。
対する王曼昱は、長いリーチを生かしたコートカバーリング力で、ちょっとやそっとでは得点を許さない受けの強さが抜きん出ている。
世界女王を決める頂上決戦は、両者が持ち味を存分に発揮しながら、最後までせめぎ合う展開になる。
第1、第2ゲームは早い打球点を捉えた両ハンドで上から押し込んだ孫穎莎が連取するが、第3、第4ゲームは孫穎莎の攻めをどっしり受けて力強い両ハンドで押し返した王曼昱が連取し、両者一歩も譲らない展開で試合が進む。
しかし、一進一退で進んだ第5ゲームをジュースで物にした孫穎莎が王手をかけると、第6ゲームも鋭い両ハンドを軸に得点を重ね、10-6とチャンピオンシップポイントを握る。二人のハイレベルなラリーをもっと見たいと惜しみつつも決着を確信した場面だったが、しかし、ここから王曼昱が2度目の戴冠に向けて執念を見せ、試合は再びヒートアップしていく。
孫穎莎と王曼昱。二人があらん限りの力を尽くした至高のライバル対決には、女子の現代卓球の「今」が映し出されている。
(文中敬称略)
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(文/動画=卓球レポート)




