その道をストイックに究めようとする者を「求道者(ぐどうしゃ)」という。40歳を越えてなお、ペンホルダーのフォア面のみを使い、シェークハンドの先鋭たちに抗う小西海偉(東京アート)を言い当てる言葉ではないだろうか。
この特別企画では、ペンドラ(ペンドライブ型)というプレースタイルを究めようとする求道者・小西の卓球観と技に迫る。
前回は、小西が卓球への思いと用具に対するこだわりを話してくれた。第2回は、ペンドラ最大の武器であるフォアハンドドライブの重要性やポイントについて、小西のこだわりを紹介しよう。
※本文の技術解説は右利きプレーヤーをモデルにしています
フォアハンドが強くないと、シェークに絶対勝てません
--フォアハンドについてお聞かせください
ペンドラはフォアハンドが強くないと絶対にだめです。シェーク(シェーク攻撃型)に勝つのは100パーセント無理です。前で勝負しようとするとシェークには絶対に勝てません。毎回プッシュ(攻撃的なショート)で攻撃はできませんし、バックからは強く攻められませんから。
ペンドラが今の卓球で勝つためには、距離を取りながらうまくフォアハンドを使っていかないといけません。
--フォアハンドで得点するためには、何が1番大切ですか
1番大切なのはコースだと思います。それと、威力。ボールにパワーがないと相手に怖さを与えられません。単にコースだけだと返されやすいですが、そこにパワーが加われば相手にプレッシャーを与えることができます。
したがって、フォアハンドドライブは「コース」と「パワー」の2つが大切で、それを常に意識して練習しています。
低い重心とコンパクトなスイングを心掛けています
--フォアハンドドライブの技術的なポイントについて教えてください
まず、重心が高すぎないことがポイントです。
そして、スイングがあまり大きくならないこと。速いボールを打つと速く返ってくるので、スイングが大きすぎると戻れません。
--小さめのスイングで強く打つコツは何ですか
ボールがラケットに当たる一瞬に、腰と前腕(ひじから先)を意識します。0.1秒ほどの、ほんの一瞬です。腰と前腕(に力を入れること)を一瞬意識して、スイングのパワーがばらばらな方向へ散らばらないようにし、パワーをインパクト(打球の瞬間)の一点へ集中させます。
ロングボールに対するフォアハンドドライブ
40歳を越えた今も、小西のフォアハンドドライブは圧倒的な得点力を誇る。そのベースになるポイントを踏まえながら連続写真をよく見て、皆さんのフォアハンドドライブ向上に役立ててほしい。
続いて、下回転のボールに対するフォアハンドドライブで小西が心掛けているポイントを紹介する。
下回転に対しては重心をより低くして、力をためます
--下回転に対するフォアハンドドライブのポイントを教えてください
下回転をフォアハンドドライブするときは、重心(腰の位置)をボールよりも低くするイメージで待ち構えます。そうして準備したら、(右足に)力をしっかりためて、腰もしっかり使ってスイングすることが、上回転(ロングボール)に対してフォアハンドドライブするときと違うポイントです。
上回転に対しては力をためずに打っても入りますが、下回転は重いので、力をためて自分の力で打たないと打球が飛んでいかず、ネットを越えません。
--ボールの捉え方はどうですか
上回転に対しては、ボールの正面より上の方を捉えますが、下回転に対してはもう少し下の方を(ボールの正面より少し上の方を)捉えるようにします。そうすると、手首をうまく使うことができるので打球の安定性が高くなると思います。
--指はどこに力を入れますか
飛んでくるボールの回転にかかわらず、親指と後ろの指を意識しています。人さし指に力を入れてしまうと前腕が使えないので、うまくスイングできなくなります。反対にバック(ショート)のときは親指にはあまり力を入れません。
下回転に対するフォアハンドドライブ
ペンドラの生命線であるフォアハンドドライブについて語ってくれた小西。紹介したポイントは、ペンドラのみならず、シェーク攻撃型の選手、そしてあらゆるプレースタイルの選手にとって参考になるものだ。
次回は、ショートにスポットを当てる。ショートは小西の長い競技生活を支える重要な技術であり、そのこだわりは必見だ。
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(取材/まとめ=卓球レポート)