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ちょっと、それ貸して!! 第1回 松平健太 × 上田仁

トップ選手同士がお互いのラケットを交換して試打し、打球感や打球スピード、使いやすさなど、相手のラケットを評価し合う新企画「ちょっと、それ貸して!」がスタート。トップバッターは青森山田中学校・高校の同級生で、日本のトップで活躍し続ける松平健太(木下グループ)と上田仁(岡山リベッツ)だ。


Kenta_Matsudaira
松平健太(木下グループ)

右シェーク攻撃型。抜群のセンスと柔らかいボールタッチを武器に、ジュニア時代から世界のトップと渡り合ってきた。巧みな台上技術、多彩なブロック、カウンターを主体とした前陣プレーは、その甘いマスクと相まって多くの観客を魅了している。

松平健太の使用用具(総重量=179g)
sorekashi01-kenta-blade.jpg
ブレード:松平健太 ALC
アリレート カーボンを搭載した弾むラケット。グリップは細め。

フォア面ラバー:テナジー05/バック面ラバー:テナジー05
回転主体のプレーに非常に高い性能を発揮するラバー



Jin_Ueda
上田仁(岡山リベッツ)

右シェーク攻撃型。前中陣でのプレーを得意とし、チキータをはじめとしたハイレベルなサービス・レシーブの技術、しっかりとしたフォームから放たれる両ハンドドライブの安定感、試合運びのうまさに定評がある。青森山田高校時代は松平健太とツインエースとして活躍した。平成27~29年全日本社会人卓球選手権大会男子シングルス3連覇。

上田仁の使用用具(総重量=193g)
sorekashi01-ueda-blade.jpg

ブレード:バタフライ特注(ZLカーボンシェーク/インナーファイバー®仕様)
ZLカーボンを搭載したインナーファイバー®仕様のラケット。

フォア面ラバー:テナジー05バック面ラバー:テナジー05
回転主体のプレーに非常に高い性能を発揮するラバー



sorekashi01-01.jpg

ブレードの違いが生み出すこれだけの違い

ラバーは2人とも両面『テナジー05』で、ブレードだけが違いますが、お互いの用具で打ってみた感想は?

上田:僕のラケットはZLカーボンですが、インナーファイバー®仕様なので、どちらかというと木製合板に近い、球持ちがいいラケットです。それに比べて健太のラケットは、球離れが速くて、どちらかというとボールが弧線を描かずに真っすぐ飛んでいきやすい感じがありました。また、僕のラケットは極端にグリップが太いんですが、同じフレア(FLグリップ)でも健太のラケットはすごく細いので、握っている感覚がありませんでした。

松平:上田のラケットは安定感がありましたが、(インナーファイバー®仕様で)木製合板に近いだけあって、パワーがないとボールがあまり飛んでいかない印象がありました。上田はパワーがあるのでちょうどいいんだと思います。上田が僕のラケットを使ったら、たぶん飛びすぎてしまうんでしょうね。

上田:僕のラケットを使ってみて、「いい」と言う人はあまりいません(笑)。ただ、球持ちがよくて、弾道が出る(弧線を描く)ので、僕としては、「自分の力で打っている」という感じがあります。


【ドライブ】
威力では健太ラケット(打球音は「キュイン」)
安定感では上田ラケット


上田:一発の威力とスピードは断然、健太のラケットの方が出ますね。僕のラケットは球持ちがよい分、安定はしますが、一発のスピードは健太のラケットの方が速いと感じました。

松平:僕のラケットはドライブを打ったときに回転をかければかけるほど「キュイン」って高い音が鳴るんですけど、上田のラケットは「ボスッ」って、回転をかけてもかけなくても一緒の音で(笑)。僕は「キュイン系」の高い音が好きなので、打球音にこだわる僕としては、上田のラケットには物足りなさを感じました。


【カウンター】
安定感で上田のラケットに軍配


上田:健太のラケットは、回転をかけたときにスピードが出るので「球が行ってる」という手応えがあります。僕のラケットにはない感覚ですね。ただ、自分のラケットだと強く打ったときは手に響く感覚が残るので、その感覚が自分には合ってると感じました。

松平:上田のラケットは、ボールをつかむ感覚があるので、しっかり自分でボールを持って打ち返しているという感覚があります。僕のラケットは球離れがよく、当たるとすぐ飛んでいってしまうので、上田のラケットに比べると安定感に欠ける部分がありますね。


【ブロック】
健太のラケットは力を入れずに打ってもいいブロックが出る


上田:健太のラケットはブロックも球離れがよく、当てただけで飛んでいき、結構やりやすかったです。僕のラケットだと100%の力で打っても飛んでいかなくて、僕にはそれが丁度いいんですが、健太のラケットは力を入れないで打ってもそれなりにいいボールがいくので、ブロックはやりやすいですね。

松平:上田のラケットは、ブロックも安定しますね。自分でボールを持っている感覚があるので。僕のラケットは簡単にビューンって飛んでいってしまう。ただ、上田のラケットだと、わりと相手コートに浅めに入るので、自分でちょっと押してあげるくらいでちょうどいいかもしれないですね。普通に止めたら飛んでいかない。


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【サービス&レシーブ】
サービス、台上プレーは飛ばない上田ラケットの方がやりやすい


上田:やっぱり健太のラケットの方が飛びますね。ストップレシーブは、健太のラケットだと飛んでいってしまうのでコントロールが難しいですが、僕のラケットは飛ばない分、ガツンと切ることができて、ストップはやりやすいですね。

松平:僕は(上田のラケットは)コントロールがしやすく、サービスが出しやすかったです。思い切り回転をかけてもちょうどいいくらいの長さになるので、勝負どころでも長くなるのを怖がらないで、思い切って出せそうです。レシーブは、僕のラケットでストップして台から出ると思ったボールでも、上田のラケットだったら出ないかもしれない。強いフリックを打つときは、僕のはちょっと抑えないといけないけれど、上田のは強く打っても入りそうですね。

アリレート カーボンとZLカーボンと素材が違うことで、打ったときにどのような違いがありますか?

松平:インナーファイバー®仕様とアウター仕様(通常の仕様)なので純粋に比べることはできませんが、僕のラケットの方がかなり飛びますよね。性能的にはZLカーボンの方が弾むし、打球音も高いと思うんですが、インナーとアウターでこんなに違うのかというくらい僕のラケットの方が飛びます。インナーとアウターという、厚さ0.数ミリの薄い板1枚の差(特殊素材の配置の違い)で、打球感も打球音も弾みも全く違いますね。

上田:僕も素材の違いよりは、インナーとアウターの大きな差を感じました。僕はやはり、ボールを持つ感覚があるインナーが好きですね。

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僕のラケット、こんな人におすすめします

松平:僕のラケットは回転をかけたときの「キュイン」という打球音を感じたい人にはぜひ使ってもらいたいですね。グリップが細いので、小中学生や女子など、誰でも使えます。太いグリップだと手が押されてる感じがしますが、細いとぎゅっと握れて、持ちかえやすく、切り替えもやりやすいです。

上田:僕のラケットは弾みが弱いので、ラリーで打ち合うよりも、台に近い位置でプレーする人におすすめです。自分で打っている感覚がすごく手に伝わりやすいので、その感覚がほしい人にはお勧めできると思います。台から下がってプレーする場合は、力がないとあまり飛んでいきませんが、前陣でプレーする分にはすごくいいので、男女問わず使いやすいと思います。



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「普段はここまでしっかりと評価するつもりで他の選手の用具を試打することはないので新鮮な体験でした」と両名。今回の企画では、用具の違いはもちろん、トップ選手が用具に何を求めているか、用具を選ぶ上で何を重視しているのかが明らかになったのではないだろうか。ぜひ皆さんの用具選びの参考にしていただきたい。

(取材/文=佐藤孝弘 動画=小松賢)

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