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有延大夢インタビュー
「もっと強くなりたい」という思いは、今が一番強い

 幼少期から全国大会で活躍し、甘いルックスからは想像できないような豪快なフルスイングと驚くような球速の両ハンドドライブを武器に、野田学園、明治大、そして、リコーと、トップレベルのチームで研鑽を重ねてきた有延大夢(ありのぶ たいむ)。
 インターハイダブルス王者、全日本学生ダブルス王者、全日本学生選抜シングルス王者とタイトルを積み重ねてきている有延だが、社会人になってから3年の時を経て、今、さらなる飛躍を遂げようとしている。
 有延が2017年から所属するリコーは、平成30年(2018年)前期日本卓球リーグで創部以来初の優勝を遂げたのを皮切りに、同年の全日本卓球選手権大会(団体の部)初優勝、そして、JTTLファイナル4初優勝と、団体戦のタイトルを総なめにした。その立役者が、単複でチームを牽引したエースの有延だ。
 そして有延大夢は、2019年4月1日から、バタフライとアドバイザリー契約を締結。これまでの道のりと抱負を語ってくれた。


少ない練習量で、強くなった理由

 卓球選手にとって「社会人になってから強くなる」ことがどれだけ難しいかは想像に難くない。特に、中高大と豊富な練習時間を約束されていた選手にとって、練習時間の減少、仕事との両立は、卓球選手としてそれまで以上のレベルアップを目指す上では大きな障壁となる。
 そうした中で、有延のような存在は稀有な例と言えるだろう。なぜ、有延は社会人になってなお成長し続けているのか。その疑問に本人はこう答える。

「社会人になってから、練習量は極端に減りましたが、少ない練習量で強くならなければならないので、それまで以上に『どういう練習をするのか』をすごく考えるようになりました。一つには、それがよかったのかなと思います。
 また、社会人になってからは、自分の試合をしっかり分析するようにもなりました。自分がどこでミスしているのかを研究して、そのミスを減らせるように実戦に近い練習を普段から行うようになりました。
 もう一つは、職場の方々の理解もあって、ナショナルチームの合宿に定期的に参加させていただいている影響もあると思います」

 練習時間が減るのだから強くなることは難しいと考えたら、その時点で自分にブレーキをかけてしまうことになる。有延はブレーキをかけなかった。そして、練習の目的を明確に絞った。

「僕の場合は、ラリー戦になると得点率が高いのですが、ラリー戦になる前のサービス・レシーブや台上技術で失点が多いので、そういう失点を減らせるように心がけて練習してきました。
 あとは、昔に比べて、サービスに対する意識が高まりました。大学生までは、ショートサービスが台から出てしまって先手を取られることが多かったのですが、社会人になってからは、相手が嫌がるサービスを出したり、YGサービスを軸に使うようになりました」

 有延の考え方は、古今の名選手に共通するところがある。
 これまで世界チャンピオンをはじめ古今の名選手の話を聞く機会があったが、練習時間の減少が引き金になって、練習の質を高め、それが選手としての成長につながったという例は少なくない。有延の言葉を聞き、そのことを思い出した。

 さて、有延大夢の武器といえば、なんと言っても両ハンドのスピードドライブだろう。その圧倒的なスピードは間違いなく国内トップクラスだ。だが、本人の評価は至って控えめだ。

「ボールが速いと言われることはありますが、自分では受けたことがないので、あまりわからないですね(笑)
 ただ、高校生の時からは自分がどういう選手で、どこが苦手でどこが得意かを考えるようになって、両ハンドプレーを軸に練習に取り組んできたので、その成果はあるかもしれません。強くボールを打つ練習が他の選手に比べて多かったのかなと思います。
 また、対戦相手は僕に思い切り打たせないように気を配ってくるので、サービスやレシーブで先にプレッシャーをかけて、いかにスピードボールにつなげるかに注力しています」

エースというポジション

 技術、戦術面以外にも有延の成長を促した大きな要因がある。それは「エース」というポジションの重責だ。野田学園時代は1年上に吉村真晴(現・名古屋ダイハツ)、明治大学時代は同級生に丹羽孝希(現・スヴェンソン)がいた。その実力にもかかわらず、有延がチームのエースとしてプレーすることはなかったのだ。

「大学生までは、自分がエースという立場で試合をする機会がなかったし、そういう自覚も持てませんでした。
 でも、リコーに入ってからは『絶対に自分が1点取らないといけない』という使命感の中で団体戦をやらせてもらえている。そこは大きく変わったところだと思います」

"リコーのエース有延"として数々のタイトルを獲得した今、選手としての自己評価はどのように変わったのだろうか。

「うれしい気持ちも達成感もありますが、来年度もまだ試合は続いていくので、今年度(2018年度)よかった部分は続けていきたいですね。
 ただ、負けた試合もたくさんあるので、その反省をチームのみんなで考えながらやっていきたいと思っています」

 さらに、昨年の有延には大きな新しい挑戦もあった。Tリーグへの参戦だ。日本初のプロリーグ元年は、琉球アスティーダでプレーした有延にどのような影響を与えたのか。

「毎試合毎試合考えながらプレーをすることがとても貴重な経験になったし、強い選手と対戦できたことは、自分ももっと強くなりたいと思うきっかけの一つになりました。
 張本選手(木下グループ)には、昨年10月の試合で0対3で負けていましたが、2月の試合では、前回の試合の動画を見て対策をして、勝つことができました。張本選手はやはりバックハンドがうまい選手なので、フォアサイドにボールを集めて、フォア側を意識させたり、こちらも台から距離を取ってラリー戦に持ち込むなどして、勝つことができました」

 Tリーグが閉幕し、有延はシングルスの個人成績は2勝4敗と負け越したが、張本智和と大島祐哉(木下グループ)に勝利した爆発力の高さは、今後のさらなる成長につながる可能性を秘めているはずだ。

「僕が苦手としていた部分の感覚を補える用具」

 有延にとって、今回のバタフライとのアドバイザリー契約はさらなる飛躍への決意を促しもした。

「バタフライとの契約は卓球選手として大変名誉なことだと思っています。
 僕の卓球人生の中で、今が一番『もっと強くなりたい』という思いが強いので、今回の契約をきっかけに、より一層頑張っていきたいと思っています」

 契約前から長らくバタフライの用具を愛用している有延の現在の用具は、特注ラケット(ZLカーボンシェーク/インナーファイバー仕様。以下、インナー)に両面『ディグニクス05』だ。

「2年ほど前までは弾みのよい用具を使っていましたが、ほぼラリーにならずに負けてしまった試合が何試合かあり、このままでは、この先もっと上のレベルと対戦したときに厳しいと思って、弾みを抑えた用具に変更しました。
 変更当初はボールの飛ばし方がわからず、速いボールを打つための打法がなかなかつかめませんでしたが、練習を重ねることで徐々に、インナーのラケットでも力強いボールが打てるようになってきました。
 また、インナーはボールをつかむ感覚があるので、サービス・レシーブや台上技術など、僕が苦手としていた部分の感覚を補えるようになりました」

 ラバーには新ラバー『ディグニクス05』を早速取り入れている。使い心地はどうだろうか。

「これまで使っていた『テナジー05』もボールが上に飛んでいくラバーですが、『ディグニクス05』はさらにボールが上に出るイメージで、今までミドルをフォアハンドで対応して、詰まってネットミスしていたようなボールも、質の高いボールで返せるようになりました。回転のかかる『テナジー05』と比べても、さらに回転がかかるラバーです。
 ラバーを変えてからまだ試合をしていないので、早く試合で使ってみたいですね」

 あの閃光のようなスピードボールが、ラバーを変えたことによってどのように変化するのか。有延の次の試合が今から待ち遠しい。
 さて、バタフライとアドバイザリー契約を結び、用具を変え、心機一転、新年度を迎える有延に、今後の目標を聞いた。

「まだまだ自分の中で課題はたくさんありますが、有延といったらこれ、という武器が、もう1つ2つほしいです。例えば、吉村(真晴)さんのサービス、張本選手のチキータのように、それだけで試合をつくれるような武器を増やしていきたいですね。
 4月にはビッグトーナメントがありますが、シングルスとダブルスで優勝を狙って練習に取り組んでいるので、それが達成できるように頑張りたいです。
 卓球選手としては、全日本の表彰台に上がることが大きな目標としてあります。そのために必要な練習やトレーニングを、これからやっていかないといけないと思っています」

 7年前、橋津文彦監督(野田学園)と吉村真晴が地方で講習会を行った時、高校生だった有延は相手役として参加した。私はその講習会を取材したが、当時の有延は元気いっぱいの、屈託のない少年だった。そんな有延が見せる両ハンドドライブに、私は目を奪われた。
 そして今、気取りのない好青年ぶりは高校生の時と変わらないが、社会人としての経験は有延を大きく変えたのだろう。時折見せる真剣な表情は、彼が積み重ねてきた年月の重みを感じさせる。
 そして、かつての有延に感じていたぼんやりとした期待は、彼のこれまでのプレーと、ここで彼が聞かせてくれた言葉によって、確信に変わった。有延大夢は、もっと強くなる。

有延大夢:https://www.butterfly.co.jp/players/detail/arinobu-taimu.html

(文=佐藤孝弘 写真=猪瀬健治、岡本啓史)
文中敬称略

『ディグニクス05』

有延大夢選手のような、スピードと回転を高いレベルで兼ね備えた両ハンドドライブを打ちたい選手にお勧めのラバーです。

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