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【特別インタビュー】 篠塚大登「僕は今、卓球がすごく楽しい」

 インターハイ(全国高等学校卓球選手権大会)中止の報を受けて、最初にこの選手のことを思い出した。篠塚大登(愛工大名電高校)だ。
 昨年のインターハイでは、1年生にして男子シングルスの決勝に進出し、2連覇を遂げた戸上隼輔(現明治大学)に肉薄した。今年のタイトルに最も近い選手だったと言えるだろう。学校対抗やダブルスでのタイトルを狙えた可能性も少なくない。インターハイ中止に日本で一番悔しさを感じている選手が篠塚でも不思議ではない。
 だが、実際に話を聞いてみると、意外にも篠塚は数々の大会の中止や休校、卓球部の活動休止という現実を受け入れ、依然として、いや、ひょっとすると今まで以上に前向きに卓球に取り組んでいた。
 卓球レポートは、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が解除され、練習が再開された愛工大名電高の篠塚に電話インタビューを行った。この間、篠塚は何を思い、どのように過ごしていたのか。インターハイ男子シングルス優勝候補の筆頭に挙げられていた篠塚の言葉に耳を傾けたい。

「選抜中止は悔しかったが、心の準備はできていた」

 篠塚にとって、コロナ禍の象徴的な出来事は全国高等学校選抜卓球大会の中止という形で訪れた。5連覇中の愛工大名電の主力として、この大会に臨もうとしていた篠塚にもこの知らせは届いた。

-高校選抜の中止はどのような形で知りましたか?

 選抜中止の情報は最初ネットで見ました。もちろん悔しい気持ちはありましたが、選抜で終わりではないし、ちょっと前から予想はしていたので、心の準備はできていたというのが正直なところです。
 でも、その後、練習場で(愛工大名電高校卓球部監督の)今枝先生から正式に中止の話を聞いて「本当に中止なんだ」と思いました。ただ、引きずっていても仕方がないので、気持ちを切り替えていこうという思いで練習に臨みました。いつになるかはわからないけど、次の試合までにもっと強くなろうと思いました。

-選抜の中止以外にはどのような影響がありましたか?

 3月の途中から味の素ナショナルトレーニングセンターでナショナルチーム合宿に参加していましたが、4月の上旬で合宿が中止になって名電(愛工大名電高校)の寮に帰ってきました。
 帰ってきたらすぐに、学校の休校と部活の休止が決まって、それからは5月下旬に緊急事態宣言が解除されるまで自宅にいました。

マシン練習とトレーニングで過ごした在宅期間

-自宅ではどのように過ごしていましたか?

 一応、家に卓球台があるので、練習はしていました。ただ、家族に卓球ができる人がいないので、ひたすらサービス練習と、マシン相手の練習でした。毎日2〜3時間はやりましたね。
 マシンは対人と違って、ボールの質がそろってしまうので、ラリーを考えた実戦的な練習よりは、一球一球の打球の質を高めることを意識しました。特に、フォームや自分の体がちゃんと使えているかということを気にかけながら、最初はワンコースで両ハンドのドライブの練習をして、次に、フットワークを入れた練習というメニューで毎日やっていました。
 僕はフォアハンドを打つときに右足が前に出すぎてしまって、次にバック側にボールが来たときに反応が遅れてしまうという課題があったので、その点はかなり意識して集中的に練習しました。
 あとは、下回転のボールを強く打つ練習も結構やりました。試合では切れたツッツキに対して、入れてしまうボール、つないでしまうボールが多かったので、ボールに威力を出すように意識しました。手打ちにならないように気をつけながら、両ハンドともやりましたが、フォアハンドは特に改善できた気がします。打球点も試行錯誤しながら、いろいろやってみて、以前よりは早い打球点で強いボールが打てるようになったと思います。

-トレーニングはどうしていましたか?

 自宅にトレーニング器具はないので、基本的には自重(じじゅう)ですね。ランニングもしました。
 これまでは卓球中心で、意識も卓球にばかり行っていたので、トレーニングにあまり真剣に取り組んではこなかったのですが、マシン以外の卓球の練習ができなくなって、新鮮な気持ちでトレーニングに取り組むことができました。
 腕立て伏せや腹筋は以前からやっていましたが、動画サイトなどで紹介されているトレーニング方法を参考にして、サーキットトレーニングをやるようになりました。そのおかげで、部分部分の筋力だけじゃなくて、体全体の力が強くなったような気がしています。
 できることは限られていましたが、僕としては、工夫しながらやれるだけのことはやっていたという感じです。

「インターハイは2年生で優勝したかった」

 そんな中、4月の下旬、篠塚にインターハイ中止の一報が届く。

-在宅期間中だったと思いますが、インターハイ中止が決まりました。

 一報はネットで知りました。「やっぱりか」と思いましたが、選抜の中止を聞いた時よりはかなり悔しかったですね。僕の場合は、(男子シングルスに)高校2年生で優勝したいという思いがあったので、その部分で特に悔しかったです。
 その直後、今枝先生からメッセージが来て、その中の「卓球人生は続きます!」という言葉で、すんなり「次を目指そう」という気持ちになれました。その言葉は大きかったですね。今枝先生からはそれ以外にも頻繁に連絡があって、モチベーションの部分ではかなり助けていただきました。今も結構、気持ちは前向きです。

-とはいえ、試合がない中でモチベーションを保つのは大変ではありませんか?

 僕は逆に、他の選手と差をつけるチャンスだと捉えています。中には自宅でも変わらず練習できていた選手もいます。焦りはありませんが、モチベーションを下げている場合ではないという気持ちはあります。

「こんなに卓球が楽しいと思えたのは久しぶりでした」

-5月14日に緊急事態宣言が(7都府県を除き)解除されて、学校と部活が再開されましたね。

 はい。久しぶりに先生や部員と会って、みんなと卓球ができて、素直にめちゃくちゃ楽しかったですね。卓球がこんなに楽しいと思えたのは久しぶりだったと思います。
 ただ、今まで一緒に練習していた中学生と高校生を時間帯で分けるようになったので、練習時間はほぼ半分になりましたし、今まで3人で座っていた3人掛けのベンチは2人掛けで使って他人との距離を取るようにしたり、1コマごとの休憩中は必ずマスクをして換気をしたりなど、変わった部分も結構あります。

-実際に人を相手にボールを打ってみた感触どうでしたか?

 ずっと自宅の狭い部屋で練習していたので、久しぶりに広い体育館で打つと全然ボールが飛ばない感覚があって、慣れるまでに少し時間がかかりました。慣れてきてからは、下回転のボールに対して強く打てる感覚はありました。

-特訓の成果ですね?

かもしれません(笑)

-次の試合は未定ということですが、この先の目標を教えてください。

 まだ、どうなるかわかりませんが、全日本(卓球選手権大会)は、ジュニアが今年度で最後なので、絶対に優勝したいですね。一般でもランク(ベスト16)には入りたいです。

-最後に、まだ十分な環境で卓球ができていない選手も多いと思われる、全国の卓球部員にメッセージをお願いします。

 子どもの頃から卓球をしていて、これだけ試合がない期間というのもなかったのですが、僕は今、卓球がすごく楽しいんです。勝負のプレッシャーから解放されて、純粋に卓球を楽しむことができているからかもしれません。だから、みんなにも少しでも卓球ができる時は、卓球を楽しんでほしいですね。
 強くなりたいと思っている選手は、さっきも言った通り、他の選手と差をつけるチャンスだと思って練習やトレーニングをした方がいいと思います。


 現役の強豪高校エースから「卓球が楽しい」という言葉を聞けたのは、これが初めてではないだろうか。特に、あまりそうした感情を表現するタイプには見えない篠塚からそうした言葉が聞けたことはとても意外だった。そして、うれしかった。
 もし、この時期に卓球から離れることを余儀なくされた読者がいたとしても、卓球の「楽しさ」はきっと待ってくれている。それは、中止になった大会の埋め合わせにはならないかもしれないが、ひょっとしたら、普通に卓球が続けられていたら出会うことのなかった喜びかもしれない。

この時間は篠塚のプレーにどのような変化をもたらしたのか。次の試合を見るのが楽しみだ

(取材/まとめ=佐藤孝弘)

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