今シリーズでは、4月下旬から5月上旬にかけてイギリスのロンドンで開催された第58回世界卓球選手権大会団体戦(以下、世界卓球2026ロンドン)で繰り広げられた熱戦を厳選して紹介する。
今回は、男子団体準決勝の中国対フランスの3番、梁靖崑(中国)対A.ルブラン(フランス)をお届けしよう。
■ 観戦ガイド
梁靖崑の鉄壁の両ハンドか。それともA.ルブランの豪打か
一方的な展開から急変する、サスペンス映画のような名勝負!
前回釜山大会の決勝の再現となった中国対フランスの準決勝は、1番で王楚欽が新鋭・F.コトンにゲームオールまで詰め寄られながらも、最後は最強中国のエースとしての意地で振り切り、中国が先制する。
2番も連勝して王手をかけたかった中国だが、林詩棟がフランスのエース・F.ルブランの畳み掛ける両ハンドにストレートで敗れ、フランスがすかさず追い付く。
両エースが取り合う形で、要の3番を迎えた。
中国の3番は、梁靖崑。2019年ブダペスト大会から4大会連続で世界卓球男子シングルスベスト4という成績が物語るように、ミスの少ない両ハンド攻守を土台に、そう簡単に崩れない安定感が梁靖崑の大きな強みだ。安定して結果を残し続けていたものの、これまでは馬龍や樊振東など強大な先輩がいたため、世界卓球の団体戦を主軸として戦うのは今大会が初になる。そのプレッシャーからか、今大会では粘り強さが影を潜め、予選リーグの韓国戦で呉晙誠に敗れ、スウェーデン戦でもモーレゴードに惜敗すると、決勝トーナメントに入ってもルーマニアとの2回戦でE.イオネスクに完敗。これまでの梁靖崑の鉄壁ぶりを知る卓球ファンからすると、信じられない試合が続いている。
4番、5番に王楚欽と林詩棟が控えているとはいえ、この3番に負ければ勝利は危うくなる。梁靖崑にとっては、中国に流れを引き寄せることはもちろんのこと、ここまでの敗戦をばん回するためにも絶対に負けられない一戦だ。
対するフランスは、A.ルブランに王手を託す。多彩なサービスから、隙あれば両ハンドで強打を狙うプレースタイルが持ち味で、アグレッシブさでは世界随一だ。今大会はここまで5勝1敗とチームの勝利に大きく貢献しており、予選リーグの日本戦ではラストで松島輝空を下し、勝負強さを見せている。
フランスとしては、本来ならF.ルブランと並んで2点起用に値する力を持つA.ルブランを3番に据え、必勝の構えだ。
試合が始まると、A.ルブランが出足から突っ走る。多彩なサービスからところ構わず強打を打ち込んで梁靖崑を防戦一方に追い込み、第1、第2ゲームを圧倒してあっという間に勝利に王手をかける。一方、A.ルブランのあまりの圧力に押され、凡ミスの少なさが売りなはずの梁靖崑に常にないミスが続く。
第3ゲームは、このまま圧倒されるわけにはいかない梁靖崑が懸命にA.ルブランのボールに食らいついて競り合うが、奮戦及ばず、A.ルブランに9-10とマッチポイントを握られてしまう。
このままA.ルブランが勝ってフランスが王手をかけるのか。それとも梁靖崑が持ち前のしぶとさで追い付くのか。場内が固唾をのむ中、梁靖崑がA.ルブランのサービスに対してストップをふわりと浮かせてしまう。
万事休す。梁靖崑が敗れ、フランスが王手。誰もがそう感じたところから、試合は、急展開を繰り返すサスペンス映画のように観衆の目をくぎ付けにし、予想をかき乱していく。
世界卓球2026ロンドンでは数多くの熱戦が繰り広げられたが、その中でも一二を争う名勝負に手に汗を握ってほしい。
(文中敬称略)
(文=卓球レポート)




