今シリーズでは、4月下旬から5月上旬にかけてイギリスのロンドンで開催された第58回世界卓球選手権大会団体戦(以下、世界卓球2026ロンドン)で繰り広げられた熱戦を厳選して紹介する。
初回の名勝負は、女子団体準決勝の日本対ドイツの2番、早田ひな(日本)対ヴィンター(ドイツ)をお届けしよう。
■ 観戦ガイド
決勝進出への王手がかかる日独決戦2番
追い込まれた早田が、さすがのゲームメークで追い上げる
1926年、卓球発祥の地とされるイギリスのロンドンで初めて開催された世界卓球。以降、数え切れないほどのヒーローとヒロイン、そして名勝負を生みながら、その歴史は100周年という大きな節目を迎えた。その記念すべき大会が、世界卓球生誕の地へと凱旋する形で開催された世界卓球2026ロンドンでは、新たな世紀への幕開けを飾るにふさわしい熱戦が随所で繰り広げられた。
世界卓球2026ロンドンで目の当たりにした名勝負の中から、まずは、女子団体準決勝、日本対ドイツの2番、早田ひな(日本)対ヴィンター(ドイツ)の一戦を取り上げたい。
世界卓球2026ロンドンは、予選リーグで決勝トーナメント進出チームとシードを決めるという方式で行われた。5大会連続銀メダルを獲得している日本は、予選リーグを全勝で第2シードを得ると、決勝トーナメント1回戦でクロアチア、2回戦でルクセンブルク、準々決勝でウクライナにいずれも3対0のストレートで快勝し、順当にメダルを確定して準決勝進出。準決勝では、6大会連続となる決勝進出をかけて、ドイツと対峙した。
両チームは予選リーグでも対戦しており、そのときは3対1で日本がドイツを下している。力では日本が上だが、予選リーグでの1失点が示すように、シェーク異質型やカット主戦型など、バリエーションに富んだ選手をそろえるドイツは侮れない相手だ。
1番は、今大会エース起用の張本美和が、43歳のベテラン、ハン・インの巧みなカットに苦しみながらも勝利して日本が先制すると、2番の早田ひなに王手を託す。前回釜山大会でも主軸として日本を決勝までけん引した早田は、今大会もここまで5戦全勝と堂々たるプレーを続けている。
一方、ドイツが巻き返しを託すのは、ヴィンターだ。2010年モスクワ大会からドイツ代表として活躍するベテランで、最近まではパワーが持ち味のヨーロッパの中堅選手という印象だったが、2024年にバック面のラバーを裏ソフトラバーからアンチラバー(摩擦力が少ないラバー)に変えて覚醒。アンチラバーによる変化からパワードライブにつなげるプレーで並み居る強敵を打ち破って世界ランキングを一気に9位まで上げ、ドイツの堂々たるエースとして今大会を迎えた。予選リーグでは橋本帆乃香を打ち負かしており、日本にとっては危険な相手だ。
試合が始まると、第1ゲームは互いが強打を決め合ってジュースまでもつれるが、勝負どころで思い切ったヴィンターが物にすると、続く第2ゲームも、アンチラバーで振りかぶる時間を稼ぎつつ、強烈なフォアハンドドライブにつなげるプレーで得点を重ねたヴィンターが連取する展開。
このままヴィンターの変化と強打に寄り切られるかと思われた早田だったが、第3ゲームから、台上とバック攻めでヴィンターの動きと強打を封じつつ、機を見てフォア側を抜き去るゲームメークで粛々と追い上げを開始する。
0対2と追い込まれてからの早田のプレーはさすがの一言だが、男子のトップ選手にもひけを取らないヴィンターのフォアハンド強打も鮮烈な印象を残す名勝負だ。
(文中敬称略)(世界ランキングは大会時)
(文=卓球レポート)




