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【特別企画】現代版ペンドラの教科書 
ダン・チウの裏面打法 
第1回 ペンホルダーとは

 現代のペンドライブ型(ペンドラ)は、裏面にラバーを貼り、シェーク攻撃型のバックハンドのように裏面打法を使うことが必須になっている。
 そのオーソリティが、ダン・チウ(ドイツ)だ。強豪ドイツの中軸へと躍進を遂げたダンの正確無比なプレーは、今のペンドラが目指すスタイルの一つだ。
 この特別企画では、今やペンドラにとって必須技術である裏面打法をダン・チウが解説・実演してくれる。現代版ペンドラの教科書ともいえるダン・チウの裏面打法から、レベルアップのヒントを学び取ってほしい。
 初回は、ペンホルダーの強みや課題、そして自身についてダン・チウが語ってくれた。
※本文の技術解説は右利きプレーヤーをモデルにしています

ダン・チウが自身の裏面打法を解説する特別企画がスタート!

ペンホルダーであることに違和感はなく
「特別な良いこと」だと捉えていた

父からは「王皓のようになれ」と冗談っぽく言われていた

ダン・チウ(以下、チウ) 日本の皆さん、こんにちは。これから、私の技術を紹介していきます。具体的に紹介する前に、自分についてお話ししたいと思います。

--よろしくお願いします。まず、ペンホルダーを選んだ理由からお聞かせください。

チウ 卓球を始めたのは6歳か7歳頃で、初めはシェークハンドを選んでいました。しかし、グリップが長すぎてバックハンドを振ったときに自分の手首に当たるので、思うように振れませんでした。
 そこで、ペンホルダーを試してみたところ、手首が自由になり、より自然にプレーすることができたので、それからペンホルダーを続けています。父(邱建新)からも、当時は中国の王皓(2009年世界チャンピオン)がとても強かったので、「王皓のようになれ」と冗談っぽく言われていました(笑)

--ヨーロッパでは、ほとんどの選手がシェークハンドを選ぶと思います。自分がペンホルダーであることに違和感はありませんでしたか?

チウ 私は、むしろ特別なことだと思っていました。違和感や問題はなく、ペンホルダーであることは「特別な良いこと」だと捉えていました。

名将として知られる邱建新氏(右)はダン・チウにとって父であり、コーチでもある

希少性がペンホルダーの強み

--ペンホルダーの強みについて、どうお考えですか?

チウ まず、希少性です。シェークハンドの選手とは多く対戦しますが、ペンホルダーの選手と対戦する機会はそう多くありません。そのため、対戦相手からすると、ペンホルダーの選手が繰り出すサービスやレシーブ、フォアハンドや裏面打法などは新鮮で珍しいでしょう。
 同じ理由で、ペンホルダーの選手とは練習する機会が少ないことも、ペンホルダーの強みだと思います。
 加えて、ペンホルダーで成功している選手は、みなそれぞれ個性的です。柳承敏(韓国/2004年アテネ五輪男子シングルス金メダル)や王皓、馬琳(中国/2008年北京五輪男子シングルス金メダル)、許昕(中国/2020年東京五輪男子団体金メダル)、黄鎮廷(香港/世界卓球2025ドーハ混合ダブルス銅メダル)、F.ルブラン(フランス/2024年パリ五輪男子シングルス銅メダル)ら優れたペンホルダー選手はたくさんいますが、彼らはみな独自の技術を持ち、個性的なプレースタイルを築いています。

元中国代表の許昕。裏面打法はあまり用いず、強烈なフォアハンドで活躍した

裏面打法とフォアハンドをバランスよく使う黄鎮廷

前陣での高速プレーを得意とするF.ルブラン

ペンホルダーは自分自身で道を創造していかなければならない

--一方で、ペンホルダーの課題についてはどうお考えですか?

チウ ペンホルダーを使うトップ選手が少ないので「参考にしたり憧れたりする選手が多くない」ことです。仮に、私がシェークハンドの選手だったとしましょう。トップ選手の誰かからバックハンドを参考にしたいと思ったら、張継科(中国)やボルオフチャロフ(ともにドイツ)など、たくさんの選手を参考にすることができます。
 しかし、ペンホルダーのトップ選手は少ない上に、先ほども述べたようにそれぞれが個性的なプレースタイルなので、参考にする選手を見つけるのが大変です。そのため、自分自身で道を創造していかなくてはなりません。この点が、ペンホルダーの難しいところだと思います。

--続いて、ご自身のプレーについてお聞かせください。チウ選手は自分のプレーをどのように捉えていますか?

チウ 私の強みは「ゲームの概要をしっかり把握できる」ことだと思います。私は、自分が試合で実行したいルーティンや戦術を明確に持っています。試合に向けてしっかり準備し、サービスやレシーブからの戦術を考えたり、相手の強みや弱点を分析した上で対応をしっかり計画したりできることが自分の強みだと思います。
 また、私には、大きな弱点や多くのポイントを失うような欠点がほとんどなく、「バランスがよく安定している」ことも大きな強みだと思っています。
 加えて、これは私にとって非常に重要なことですが、「自分にできることとできないことを理解している」ことです。
 例えば、私はフランチスカ(ドイツ)や林昀儒(中華台北)のようなチキータを打つことはできませんが、自分にできることは分かっています。例えば、林昀儒と対戦する場合、彼がどれほど質の高いチキータを打つのかは分かっていますし、それを避けることはできません。確実に彼はチキータしてきますし、それを「打たせない」という選択肢はありません。だからこそ、私はそれに準備して臨むのです。

--チウ選手は、ペンホルダーとして初めてヨーロッパを制しました。このことについてはどう捉えていますか?

チウ 私はヨーロッパ選手権大会のチャンピオンですし、F.ルブラン(フランス)はヨーロッパ競技大会のチャンピオンです。そのため、多くの人がペンホルダーで成功している私たちを見ているので、もしかすると将来的にはペンホルダーを選ぶ子供が多くなるかもしれませんね。
 そうして、彼らがペンホルダーのスタイルをさらに発展させてくれることを願っています。

試合展開を把握し、それに応じたプレーができることがダン・チウの強みだ

 初回となる今回は、ダン・チウが自身の来歴やペンホルダーについて語ってくれた。
 次回からは、具体的に裏面打法を紹介していく。お楽しみに!

↓動画はこちら

(取材/まとめ=卓球レポート)

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