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林昀儒インタビュー
「ようやくスタートラインに立てたところです」

「飛ぶ鳥を落とす勢い」とはまさに今の林昀儒のために用意された言葉だといっても過言ではないだろう。
 7月にはT2ダイヤモンド第1戦で馬龍、樊振東(ともに中国)らを破って優勝、そして、8月にはチェコオープンでボル、オフチャロフ(ともにドイツ)らを撃破してワールドツアー初優勝。東京オリンピックを1年後にひかえ、林昀儒はこの先どこまで駆け上がることができるのか。
 卓球レポートでは、T2ダイヤモンドの優勝を決めた翌日に来日した林昀儒を取材。濃密であったであろう卓球人生に迫るとともに、T2ダイヤモンドで感じた手応え、今後のビジョンについても語ってもらった。饒舌とは言えない林昀儒だが、やはり普通の18歳ではないと感じさせるその言葉に宿る重みを感じていただきたい。

―卓球を始めたきっかけは?

林昀儒:9歳(小学校3年生)の時に、父が勤務している大学でサマーキャンプがあり、夏休みで特にやることがなかったので参加しました。そこで、いくつかあった選択肢の中から卓球とバドミントンのコースを選んだのが卓球との出会いです。
 それで、バドミントンよりも卓球の方が面白かったので、興味を持ちました。ちゃんとスポーツとして卓球に取り組みたいと思うようになり、卓球部のある学校に転校しました。
 とはいえ、体を動かす一環で始めたので、最初から本格的な練習をしていたわけではありません。

―卓球のどこに惹かれましたか?

林昀儒:卓球にはさまざまな「変化」があって、自分の予測を超えるスポーツという点が面白いですね。他のスポーツにも変化はたくさんあると思いますが、卓球の場合はより繊細です。特に、回転はその好例でしょう。そうした「変化」が面白いですね。
 今はそう感じていますが、始めた当時は、ただただ楽しく、がむしゃらにやっていました。

―それからどのようにステップアップしていったのですか?

林昀儒:卓球を始めて1年目から全国大会に出場して、ある程度の結果は出始めていました。そして、小学5年生の時に親がプライベートコーチを付けてくれました。6年生になると、今度は中国人のコーチを付けてくれました。
 卓球を始めて5年たった頃に、気がついたらナショナルチームに入っていたという感じです。

―自分でも成長の手応えは感じていましたか?

林昀儒:ある程度の手応えはありました。中学生の時もプライベートコーチをつけて、多い時には1日7〜8時間と、同年代の選手よりもはるかに練習していたので、それだけ伸びるのは当たり前だと思っていました。
 こうすれば強くなるという方法は分かりませんが、自分のことを心から思って指導してくださるコーチに出会えたことはよかったですね。

―最初の世界卓球は2016年のクアラルンプール大会でしたね。

林昀儒:そうです。14歳の頃ですね。すごく緊張していて、1試合目が終わった後に、インフルエンザにかかって寝込んでしまいました。

―それからわずか3年で、国際大会(T2ダイヤモンド第1戦)で初優勝しました。ジャパンオープンで準優勝してから、韓国オープン、オーストラリアオープンとあまり振るいませんでしたが、どのように調整して臨んだのですか?

林昀儒:ジャパンオープン前の大会でも、結果は良かったり悪かったりでした。T2でも特に「優勝するぞ」と思っていたわけでもありませんし、馬龍と対戦するときなどは「負けて当然」と思って試合に入りました。変に力まずにプレーできたのがよかったのかもしれません。

―T2ダイヤモンド第1戦を振り返っていかがですか?

林昀儒:1試合目の対戦相手は水谷隼選手でした。以前、Tリーグで当たった時は負けていたので、平常心で試合に臨むことを心掛けました。
 2回戦の馬龍には負けると思っていたので、翌日は遊びに行く予定にしていました(笑)。僕自身そういう気持ちで試合に入りましたし、会場も「どうせ馬龍が勝つだろう」というような雰囲気だったと思います。そうした僕の姿勢や会場の雰囲気が馬龍にどのように影響したかは分かりませんが、勝つことができたので結果的にはよかったということだと思います。内容的には、終始自分から攻撃することができました。
 準決勝の黄鎮廷(香港)は、今年2回対戦していて1勝1敗だったので、苦しい試合になるだろうと思って試合に臨みました。お互いに緊張しているのが分かりましたが、僕のサービスが効いて、崩すことができました。
 決勝の樊振東戦は、僕は失うものは何もないので思い切ってやるだけでした。樊振東の調子がここ数カ月あまりよくなかったことも勝因の一つだったかもしれません。
 大会前は1回戦突破を目標にしていたいので、優勝が決まった時は信じられない気持ちでした。

―優勝が決まったときもリアクションは小さかったですね。

林昀儒:人の表現にはそれぞれ違いがあると思っています。実際は僕も心の中では興奮して、感動しています。それが表に出ないだけで......、あれが僕なんです(笑)

―T2ダイヤモンドは特別ルールでしたが、何か意識したことはありますか?

林昀儒:基本的にはいつもと同じ感覚で臨みましたが、終わってみて感じたのはとてもリスキーなルールだということです。
 ランキングの下の選手が上の選手に勝つチャンスが、通常のルールより増すと感じました。
 ただ、(格上の馬龍や樊振東と対戦する上でも)やりやすさは感じませんでした。むしろ、やりにくかったですね。このルールが特に僕にとって有利に影響したという感触はありません。他の選手も対応しようとしている過渡期だと感じました。

―用具について聞かせてください。バック面のラバーを『ディグニクス05』に変えてからいかがですか?

林昀儒:昨シーズンのTリーグに参戦した時(2019年2月)から変更しました。それまでは『テナジー05』を使っていましたが、『ディグニクス05』に変えてからは全体のバランスがよくなったと感じています。自分の思い通りの弧線を描けるようになりました。
『テナジー05』との違いで僕が明確に感じるのは、初速の速さです。『テナジー05』の方が速いです。一方、『ディグニクス05』は初速では劣りますが、中陣の引き合いになった時に明らかに『テナジー05』よりもやりやすく、安定して弧線を描けます。プレー全体を見ても『ディグニクス05』の方がバランスがいいですね。

 フォア面は『テナジー05ハード』を使っていますが、以前は『テナジー05』を使っていました。『テナジー05』の時は、相手に質の高いボールを打たれると、回転の影響を受けてしまって対応できないことがありました。
 しかし、『テナジー05ハード』にしてからは、自分の思うようなボールが打てるようになりました。スポンジが硬いのでコントロールは難しくなりましたが、力強く打つことができれば、質の高いボールにも対応しやすいラバーだと思います。

―これから先、自分がどこまで強くなるか、ビジョンのようなものはありますか?

林昀儒:これでようやくスタートラインに立てたところだと思っています。実際には、これからもっと難しい局面に出会うことになるだろうと思っています。それらを克服していくのはとても大変なことでしょう。でもその一つ一つに立ち向かっていこうと思っています。


 卓球レポートとしては、2度目のインタビュー(前回のインタビューはこちら)で多少の慣れも生じたのかもしれない。前回よりはリラックスした様子で、多くのことを語ってくれた。それでもまだ朴訥とした印象を与える林昀儒だが、私が何よりも感心したのは彼の言葉が常に虚飾のない、実感を伴った言葉だということだ。自分をより良く見せようとか、より大きく見せようという「計算」がまったくない。その背景には、彼の自信や自己肯定感があるのだろう。
 その林昀儒が本心から今の自分の立ち位置が「スタートライン」だと感じているなら、彼のゴールはどれほど遠くに、どれほど高くに見据えられているのか。助走を終えて、走り出した林昀儒。その走りっぷりを見ることができるのは卓球ファンとして僥倖というほかないだろう。

(文=佐藤孝弘、写真提供=T2 Diamond)
*文中敬称略


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