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強化のフロントライン48 
2020年全日本卓球 
早田ひなについて

〜宮﨑強化本部長に聞く日本の強化策〜
 日本の最前線ではどのような強化が行われているのか。そのさまざまな方策について、日本卓球界の強化の長である宮﨑義仁強化本部長に聞く強化のフロントライン
今回は、2020年全日本卓球選手権大会女子シングルスで優勝した早田ひな(日本生命)について評価していただいた。

スタンスに進境を見せて新女王に輝いた早田ひな

バックハンドが大きな得点源になっていた


 今回から、2020年全日本卓球選手権大会(以下、全日本)女子シングルスで上位に進出した選手の評価を述べていきたいと思います。
 初めに、初優勝を果たした早田ひな(日本生命)についてお話しします。

 今の全日本女子シングルスのトーナメントは、優勝すれば世界卓球選手権大会のメダルに匹敵すると言っても過言ではないほどハイレベルです。そのレベルの高いトーナメントを、早田は制しました。
 準々決勝でカット主戦型の佐藤瞳(ミキハウス)、準決勝で一昨年、昨年と2連覇している伊藤美誠(スターツ)、決勝で実力者の石川佳純(全農)と、強敵を連破しての優勝は見事でした。

 早田が今回の全日本を制した要因として、私が注目するのは彼女の「スタンス(足の構え)」です。
 一般に、左利きの早田の場合、右足を左足よりも少し前にした(右利きの選手は左足を右足よりも前にした)スタンスでプレーすることが今までの基本とされます。利き足(左利きの早田は左足。右利きの選手は右足)が後ろの、いわゆる順足のスタンスは、フォアハンドが打ちやすいからです。
 ところが、今回の早田の試合をご覧になった方なら一目瞭然ですが、彼女は左足を右足よりも前にした、いわゆる逆足と呼ばれるスタンスでプレーしていました。
 
 逆足のスタンスは、順足のスタンスに比べてフォアハンドのバックスイングが取りにくくなりますが、その半面、「バックハンドが打ちやすくなる」というメリットがあります。
 これまでの早田は、フォアハンドは世界でもトップクラスの球威ですが、その一方で、「バック側を厳しく攻められると崩れやすい」という弱点がありました。
 しかし、今回の全日本における早田は、弱点だったはずのバックハンドで、強敵を相手にことごとくラリーの主導権を握っていました。逆足のスタンスを心掛け、バックハンドを補強したことが、早田の大きな勝因でしょう。
 持ち味であるフォアハンドの球威はそのままに、バックハンドを強化して隙がなくなった早田は、「世界の頂点を十分に狙える」新しいプレースタイルを見せてくれたと評価しています。

準決勝の最終ゲームに表れたバックハンド強化の真価

ハイレベルな競り合いの末、準決勝で本命の伊藤美誠に勝利


 今回の全日本における早田のバックハンドで、特に印象に残っているのが、伊藤との準決勝です。
 この試合は最終の第7ゲームまでもつれましたが、第7ゲームの4-4で見せた早田のバックハンドドライブによるレシーブエースは圧巻でした。

 この場面で伊藤は、ストレート(早田のバック側)にロングサービスを出しました。伊藤らしい、思い切ったサービス選択だったと思います。普通であれば、間違いなく相手の動揺を誘う一手です。
 ところが、早田は逆足のスタンスでレシーブを構え、伊藤のサービスがいつバック側に来てもいいように準備していました。そして、狙い通りにバック側に来たロングサービスをクロス(伊藤のフォア側)へ思い切りバックハンドドライブし、見事にエースを奪いました。試合の流れを完全に引き寄せたレシーブだったと思います。
 
 一方、早田に読まれた伊藤からすると、それまで自分が思い描いていた「勝負どころでバックハンドを使わせる」という早田攻略のイメージが完全に崩された1失点だったでしょう。この後、らしくない失点を繰り返したことからも、伊藤の思考が鈍り、集中の糸が切れてしまったことが伺えます。
 
 いずれにしても、早田が伊藤戦の第7ゲームの4-4で繰り出したバックハンドドライブでの鮮やかなレシーブエースは、伊藤戦の勝利を決定づけた得点であると同時に、彼女のバックハンド強化の成果が実った瞬間だったと思います。

(取材=猪瀬健治)

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