まだまだプレーを続けたいし、東京五輪にも、もちろん出たい。故障さえなければ、十分に今のレベルをキープできる

わずか15歳でドイツ・ブンデスリーガにデビューし、筋金入りのプロフェッショナルの世界で、トップ選手としての地位を確立してきたティモ・ボル。
「僕は縁起をかついだり、ジンクスのようなものを持ったりするのはあまり好きではない」とボルは言う。その信念が現れているのが、「1」から「4」まで、グリップに小さなナンバー(数字)が記された4本のラケットだ。
ボルは自分が使うラケットを1本に固定せず、4本のラケットを交替で使いながら、練習試合に臨む。「メインラケット」「スペアラケット」という概念がないのだ。前日の試合で、ナンバー2のラケットで非常に良いプレーをして勝ったとしても、次の日にナンバー3やナンバー4に替えることも珍しくない。
「08年北京五輪の時に、スペアラケットでプレーした試合がありました。フィーリングが悪くて、全く別のラケットのように感じたんです。それをきっかけに、ノングルーになってからは4本のラケットをローテーションさせています。台の角にぶつけてラバーが切れるようなことがあっても、他の3本のラケットも全く同じ状態なので、すぐに変えてプレーできます。
ラバーを替える時も、必ず4本同時に替えます。1本だけラバーを替えたりすると、そこに何か『迷信』のような感覚が生まれてくる。『このラケットが良い』と一度思い込んでしまうと、同じラケットばかり使うようになるから、4本のラケットは公平に扱って、常に同じ条件をキープしたい。もちろん、使いこなすにはある程度の自信も必要です」
極めてユニークな、4本のラケットのローテーション。もちろん、ラケットとラバーの品質が高いレベルで安定していなければ、このローテーションに身を委ねることはできない。

ヨーロッパ選手権での優勝6回という史上最多記録、五輪・世界選手権では合わせて10枚のメダルを獲得し、05年男子ワールドカップでは中国選手を連破して歴史的な優勝を飾った。『テナジー05』とともに数多くの栄光を築き上げてきたボルに、こんな質問を投げかけてみた。
勝つために、あなたが最も大切だと思うことは何ですか?
「自分を正確に分析する目を持つことですね。一つひとつのプレーに対して、何が良かったのか、どこに問題があったのかを常に分析していく。自分自身のプレーや技術をきちんと分析できることは、勝つためにとても大切なことです」
ボルがデビューした頃、ヨーロッパの卓球界はギラギラした個性を放つ選手がたくさんいた。その中にあって、彼はどこまでも爽やかで自然体だ。
すでに36歳と「大ベテラン」の域に入りつつあるが、卓球へのモチベーションについて全く不安はない。
「試合が始まればいつだって勝ちたいと思うし、卓球をプレーするのも、練習するのも好きです。まだまだプレーを続けたいし、20年東京五輪にも、もちろん出たいと思っています。故障さえなければ、十分に今のレベルをキープできます」
ともに戦う4本のラケットは、オリンピックが終わった時点ですべて新しいものに替えるという。リオ五輪後に使い始めた現在のラケットは、東京五輪で使い納めだ。
東京五輪の晴れの舞台で手にするラケットのナンバーは、当日になってみなければわからない。しかし、どんな戦いが待ち受けようとも、ティモ・ボルは用具を信じ、己を信じて戦い続けるだろう。


BOLL Timo ティモ・ボル
1981年3月8日生まれ、ドイツ・ヘーヒスト出身。4歳で卓球を始め、97・98年ヨーロッパユース選手権ジュニア優勝。02年ヨーロッパ選手権で初優勝し、同大会では計6回の優勝を果たす。
05年ワールドカップ優勝、08年五輪団体銀メダル、12・16年五輪団体銅メダル、11年世界選手権シングルス3位、今年に行われた世界選手権でもシングルスでベスト8に入った。世界ランキング6位(17年9月現在)

【卓球王国 2017年11月号掲載】
■文中敬称略
文=卓球王国
写真=中川学/アン・ソンホ

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